【テヘラン/イラン 14日 AFP】イランの首都テヘランのサダーバッド(Sadabad)宮殿でイラン人デザイナーによる展示会が開催された。イスラム政府の政策の下敷かれた厳しい服装規制にも屈することなく、ファッションを通じて自国らしさを表現していこうという試みから開かれた同展示会では、独自のペルシャ文化にインスピレーションを受けた作品がずらりと並んだ。


■ペルシャ伝統文化を通して見るファッション

 使用された生地やモチーフは、紀元前550年頃この地で栄えたアケメネス朝から20世紀初頭のガジャール朝時代のものに渡っており、歴史の流れに沿って変化する流行が見て取れる。そんなペルシャ文化を前方に押し出した今回の展示会は文化遺産協会主催。さらにはイラン政府から「イスラムの規範内で」と奨励されての開催となった。

 また会場に展示された色鮮やかな衣装は、イラン北部に住むクルド人や南東のバローチェスタン地方の伝統衣装に着想を得たものも含まれており、多民族国家イランの特徴を上手く表しているといえるだろう。

 「現代のニーズも意識しながら、昔から伝わる織物の技法やイラン独自のモチーフを蘇らせたかったのです。」と、語るのはイラン人デザイナーのババック・トラービー(Babak Torabi)氏。「何世紀も昔の衣服なので、見本となるものを見つけるのが大変でした。市場の活性化にも、デザインの奨励にとっても、政府の後援は必要不可欠でした」と付け加える。

 正面に古代の硬貨を縫いつけたドレスに、ふわっとしたヴェールを垂らした小さな帽子、ペルシャの詩歌をカリグラフィー仕立てに縫いかがったものなど、イスラム到来以前からのイラン伝統技法を生かした作品が並ぶ。

 展示品の多くは、およそ170ドル(約2万円)ほどで販売されているが、これは普通のイラン人にとっては少々高すぎる値段であることも否めない。美術を専攻しているモジガン・エルファニー(Mojgan Erfani)さんは、「ペルシャ文化の影響を受けたモチーフはとても美しいと思います。でも、値段が高すぎるわ」と述べた。


■女性達の抵抗に逆らえきれないイラン社会

 1979年に起こったイラン・イスラム革命はそれまでのイラン社会を根底から変え、女性達はイスラム政府の下、体のラインを強調しないようゆったりとした服を身につけ、スカーフで髪の毛を覆うことが義務づけられた。

 しかしながら、女性達は少しづつだが抵抗の意を見せてきていることも確かだ。近年街中では、若い女性達はスカーフを被っているものの、髪の毛はほとんど見えた状態。さらに禁止されているはずのぴったりとしたコートは、年々丈が短くなってきている。本来正統とされている足から頭までをすっぽり覆う「チャドル」という黒い布とは対照的に、街には色とりどりのスカーフをなびかせながら歩く女性達が増えている。

 そんな状況に危機感を感じてからか、政府はペルシャ伝統文化の保護という名目でイスラムの規範に沿ったファッションの展示会を後援するに至った。展示会を訪れる女性達の中には、服装の自由と信仰心を重ね合わせてしまっている政府の政策に疑問を感じずにはいられないという意見も目立つ。”ファッション”においてまで、自分たちの選択肢を狭められてきた女性達の不満は募る一方だ。


■人々の認識を変える新しい伝え方とは

 「このような展示会が、もっと国内で開催されるようになれば良いなと思います」と語るのは、メイクアップアーティストのシャラレー(Sharareh)さん。「我々の国のファッション文化が、大変豊かなものであるという事を伝えていくのに最良の方法はテレビです。そのため、女優やアナウンサーなどはこういう服を着るべきなのではないでしょうか」と続けた。


 以前テヘランで開かれた展示会では、衣装がアラブ諸国の影響を受けており、主催者が寛容になりすぎていると批判を受けた。しかし今回の展示会は「政府公認」であるためその心配はない。政府の協力を上手く得て、少しづつこのような場を持つことが一つのポイントと言えるだろう。

 「イランに存在する生地の豊富さを知ってもらうことが、私たちの目的です。今回の展示会で作品を発表したデザイナーのほとんどが、イラン国外でショーを開いています。しかし、イランで作品を披露することは、世界のファッション界において、イラン文化が独特のカラーを持つという事を人々に認識してもらうことに繋がります」と、主催者の1人が語った。

写真は、地元デザイナーの作品を披露するマフサ(Mahsa左)さんとサナーズ(Sanaz右)さん。(c)AFP PHOTO/BEHROUZ MEHRI