【デュッセルドルフ/ドイツ 10日 AFP】壊れたり、色がはげ落ちたバービー人形たちは、どこへ行くのか? その答えは、ドイツのデュッセルドルフ(Duesseldorf)在住の主婦Bettina Dorfmannさん(45)の家だ。

■壊れたバービー人形が世界各国から集まってくる

 Dorfmannさんは、過去12年間、バービー人形に愛情を注ぎ続け、醜い外見になって見捨てられた人形たち、数百体を救ってきた。

 Dorfmannさんがバービーの「救助作業」を行うのは、自宅のキッチン・テーブルの上だ。壊れてしまった胴体の部分を取り替え、運動場での引っ張りあいで抜けてしまったブロンドの髪を足し、ロングドレスや看護婦の制服の破れを繕う。

 この修復作業の仕事の宣伝活動として、自分の車に、こんな看板を張っている。
「バービー・クリニック:あなたのバービーの買い取り・修理を行います」

 この仕事は口コミで広まり、今では世界中から依頼があるという。小柄でブロンドの髪のDorfmannさんは、AFPの取材に応じて、

「色々な国から人形が送られてきます。アメリカ、ベルギー、フランス、イタリア、日本、オランダ…。特に多いのはカナダからです。世界的規模の“事業”なんですよ」と語った。

■実は、世界有数の「バービー人形コレクター」

 バービーは、米玩具メーカー、マッテル(Mattel)社が企画販売した中で最も成功した玩具で、現在も世界一有名な人形だ。

 Dorfmannさんは子ども時代、見事なバービー人形を20体持っていた。それを全部、自分の子どもに譲ろう、ずっと大切にしていたのだが、現在、15歳になる一人娘は幼い頃、時代遅れの服を着たその人形に全く興味を示さなかった。そこでDorfmannさんは、その人形を手放す代わりに、さらに多くのバービーを買い集め始めた。これが、世界最大のバービー・コレクションの始まりだ。


 集めた数は、なんと約4500体。すべて種類が異なるバービー人形だという。そして、Dorfmannさんのコレクションは、数十年間にわたり変化し続けてきた同社のバービー人形すべてが収集されており、いわば完璧な「記録保管所」となっている。

 Dorfmannさんのお気に入りは、1950年代後半のシリーズ。上品なスカートのスーツ、手袋、帽子を身に着けている。本物の毛皮をまとっているものもある。60年代のバービーは、ゆったりとしたドレスを着た、フラワーチルドレン風のもの。続く70年代には、派手なサングラスをかけた「ディスコ・バービー」が登場する。

 現在、完璧な状態で保存されているものを購入するとなると、1体は最高で1500ユーロ(約23万円)になるものもあるという。

■まだまだ続く、コレクション収集

 Dorfmannさんは、保存状態の完全な人形意外に、大量の壊れた人形も買い取る。修理用のパーツや衣装に使うためだ。Dorfmannさんの家には、きちんとラベルを貼ったハコに入れられたこれらの人形の箱が、天井まで積み上げられている。このほか、バービー用小道具、家族の写真、ぬいぐるみ20体近く、装飾品などが家中に所狭しと置かれている。

 「どれも捨てられません。そのうち、私たちはこの荷物の山に押しつぶされてしまうかもしれません。でもどうしたらいいんです?」とため息をつきながら話した。

 Dorfmannさんは以前、「バービー解放」をテーマにした展示会を開き、成功を収めたという。展示会を開いた理由について「昔は、秘書やスチュワーデスのバービーばかりでした。でも今はパイロットや外科のバービーもいるからです」と語った。

 写真はデュッセルドルフの自宅で、バービー人形たちと写真撮影に応じるDorfmannさん。(2001年11月15日撮影)(c)AFP/FEDERICO GAMBARINI