【ニューデリー/インド 10日 AFP】第79回アカデミー賞(The 79th Academy Awards)外国語映画部門にノミネートされた、議論を呼ぶカナダ/インド合作映画「Water」が、遂にインドで全国公開を迎えた。同作品は、虐げられた生活を送る夫を亡くしたヒンズー教徒の女性の物語。

■漸く掴んだインド公開のチャンス

 トロントを拠点に活動するディーパ・メータ(Deepa Mehta)監督によるインドでの撮影は7年前、過激派のヒンズー教徒らの暴力的な抗議運動により、中止を余儀なくされていた。

 オスカー外国語映画部門のカナダ代表としてノミネートされた同作品は、国内110の映画館で封切られたと配給者のRavi Chopraさんは発表した。

 「まず製作を行うのに、そして公開にこぎつけるまで、本当に長い道のりでした」自身も社会派の作品で知られる映画監督であるChopraさんは語る。

 この映画では、英国の植民地時代、物乞いや売春を行い生活を支え「神の奴隷」として生きることを強いられた、夫を亡くした極貧の女性たちが描かれている。

 ヒンズー教徒の過激派は同作品を、神を冒涜するものと糾弾し、ヒンズー教に対するイメージを汚すための計画の一部だと主張した。

 インドで撮影を試みていた最中、自らをかたどっ人形を燃やされ、殺害の脅迫を受けたメータ監督は、この映画を公開する映画館で何が起こるか不安であると声にしていた。

 しかし、これまで50を超える国で公開された同作品についてChopraさんは不安を感じておらず、特別な警備も準備していなかったという。

 「今のところ問題はありません。もし何かが発生したら、私たちが対処します」ChopraさんはAFPの取材に対しこう答えた。

 メータはヒンズー教の神聖な街、ヴァラナシで撮影を開始したが、映画のセットは暴徒により破壊された。

 ヴァラナシのあるウッタル・プラデーシュ州が治安の保障は出来ないと宣言した後の2000年、メータはインドでの撮影を諦めた。

 メータは最終的に4年後、スリランカで完成させ、映画は2005年のトロント国際映画祭(Toronto International Film Festival)でプレミアを迎えることになった。

 「この映画の中に、誰かの気持ちや感情を逆なでするものは何もないはずです」Chopraさんは語った。

 世界的に高い評価を受けた後でも、ヒンズー教徒過激派からのトラブルを恐れたインドの配給会社は、この作品の上映に難色を示していた。

 「とても愛すべき映画だと思いました。インド人の客も観るべきだと感じたのです。それが私が配給権を獲得した理由です」Chopraさんはこう述べた。

■今もなお虐げられる女性たち

 この映画の時代設定は70年前であるが、インドには現在も、家族からも悪運を招くと見放され、貧困と孤独の中に生きる夫に先立たれた女性たちが存在する。

 地方には特に、経済的な重荷だとされ家族に見捨てられた多くの女性がおり、彼女たちは生きるために寺院で物乞いを強いられている。

 「彼女(夫を亡くした女性)は求められていないのです。最も簡単なのは、彼女を追い出すことです」寺院の街ヴリンダヴァンで夫を亡くした女性たちの避難所を運営している女性活動家のMohini Giriさんは語る。

 「彼女には妻としての身分しかないのです」。

 第79回アカデミー賞外国語映画部門賞にノミネートされている5作品の関係者による記者会見に出席した際のディーパ・メータ監督(2007年2月23日撮影)。(c)AFP/Getty Images Michael Buckner