【東京 9日 AFP】第二次世界大戦中の日本軍による従軍慰安婦問題をめぐる対日非難決議案が、米下院外交委員会で3月末にも採択が行われる見込みとなった。同委員会のエニ・ファレオマバエガ(Eni Faleomavaega)小委員長が8日、読売新聞に語った。

■採決の日時は、安倍首相の訪米をにらみながら

 ファレオマバエガ省委員長は、米領サモア(American Samoa)代表の民主党下院議員。同議員によると、全委員50人中、36人が決議案を支持した。日本政府による正式な謝罪が得られなかった場合、決議案は議会が2週間の休会に入る4月以前に採決され
、本会議に送られる見通しが高いという。

 しかし、4月下旬には安倍首相の訪米が予定されており、日本側への配慮から議会での審議は安倍首相の帰国後になる可能性もある。

■決議案浮上の背景は

 同決議案は、民主党のマイク・ホンダ(Mike Honda)下院議員が中心となってまとめたもので、日本政府に従軍慰安婦の存在を認め公式に謝罪するよう求めている。ホンダ議員は、幼少時を米国の日系人収容所で過ごした経験を持つ。

 対日決議案が浮上した背景には、2006年11月の米中間選挙でジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)大統領の共和党が敗北し、民主党が議会の多数派となったことがある。

■日本政府は「従軍慰安婦の強制性」について疑問視する姿勢

 日本政府も決議案に反対すべく米議会に働きかけているが、安倍晋三首相が「従軍慰安婦に強制性はなかった」と語ったことで、対日決議案が採択に向けて勢いづく結果となった。
 
 一方、自民党の中川昭一政調会長は8日の記者会見で、従軍慰安婦問題について「政治家は歴史判断をするべきではない」と語った。また、複数のメディアが伝えたところによると、中川氏は「従軍慰安婦の強制性については、専門家らが検証している段階だ。それを教科書に事実として掲載するのはいかがなものか」との疑問を呈した。

 写真は国会議事堂の前で、日本政府に謝罪を求めて抗議運動をする人々と元従軍慰安婦の韓国人女性 Lee Yong-Sooさん。(2005年10月10日撮影)(c)AFP PHOTO/Toru YAMANAKA