【バグダッド/イラク 9日 AFP】血痕が付着したがれきのそばで、抵抗の詩を詠む詩人たち。古代から文学活動の中心地とされてきたバグダッド中心部の書店街ムタナビ(Mutanabi)通りが自動車爆弾で吹き飛ばされた数日後、詩人やアーティストが嘆きのパフォーマンスをするために現場に戻ってきた。

 川沿いのこの一角にはもともと書店やカフェが建ち並び、戦争に疲れた作家、出版関係者、教師、知識人が集って賑わいを見せていたが、5日の爆弾攻撃で壊滅的な被害を受け、30人が死亡、65人が負傷した。オスマン帝国時代の優雅な建築物も大半が破壊された。

 今や見るかげもなくなったこのムタナビ通りで8日、「文化活動の死」を悼むパフォーマンスが開催された。著名な詩人が多数参加し、1932年にファイサル2世によって建設されアラブの詩人ムタナビ(Abu Taib al-Mutanabi)の名前にちなんだこの通りの焼失を嘆いた。

■アーティストがパフォーマンスで主張

 主催者の1人であるアーティストのJabbar Muhaibsさんは、頭に木箱をすっぽりかぶり、「ここに灯りがともることは二度とないだろう」と、くぐもった声で悲痛に語った。

 バグダッドのFine Arts Academyの講師もつとめるMuhaibsさんは、焼けただれた車の残がいの上で飛び跳ねながら次のような詩を朗読した。
「詩人、そして彼らが作る詩に、一体何が起きたのか。すべては血に覆われ、魂は粉々となり、胴体はがれきの下に埋まっている」

 続いて、詩人のAbdul Zahra Zakiさんが、アーティストのたまり場であったカフェのがれきを積み上げながら、「言葉、言葉、言葉(Words, words, words)」と題された詩を朗読した。

 Zakiさんは、目の前に広がる荒れ果てた光景を描写し、次の文句で締めくくった。
「ここには何もない。燃えさかる言葉をのぞいては」

 続いて、詩人のTawfeeq Timemiさんが前に進み出て、絶望に屈してはいけないと仲間に呼びかけた。
「こうした犯罪がわれわれの文化を標的にしていようとも、われわれは屈しない。抑圧には屈しない。ムタナビ通りを必ずや再建し、文化を再び花開かせるであろう」

 そして、詩人のDawud Salmanさんが「抵抗のしるし」として自分のシャツに火を付けた。「暴力と破壊の炎がわれわれの希望まで燃やすことは許されない」と彼はAFPに語った。

■アラブ文学者に支援を呼びかける

 パフォーマンスの最後には、先ほどのZakiさんが世界中のすべての「アラブ文学者」と詩人に対し、イラクの知識人への支援を呼びかける声明を読み上げた。「ムタナビ通りのがれきと高価な本の灰の中に、死した友人たちの遺骸からほど遠くない場所に、バグダッドの詩人たちが、がれき、煙、銃声の中で立ちすくんでいる。イラク人は、人道主義と文明の中心地であり歴史の目撃者たるバグダッドに集っているわれわれのために団結し、声を上げてくれるアラブの仲間を待ち望んでいる」

 イラク人は、昔から、アラブの中でも最も読書を愛好する国民として知られてきた。1960年代には、次のような格言も生まれた。
「本は、カイロで書かれ、ベイルートで出版され、バグダッドで読まれている」

 写真は8日、パフォーマンスをするMuhaibsさん。(c)AFP/ALI AL-SAADI