【スパルタ/ギリシャ 9日 AFP】血に染まったヤリを片手に300人の兵士を率いたスパルタ王レオニダス(Leonidas)とペルシア軍が繰り広げた血なまぐさい死闘、テルモピュライ(Thermopylae)の戦いを描いた新作米国映画「スリーハンドレッド(300)」のプレミア上映会が7日、スパルタで開催された。

 「スパルタの民よ。今宵(こよい)、地獄の宴を催そうぞ」レオニダスは敵陣を迎え撃つ前にこう言い放つ。

 テレモピュライで絶滅するまで戦い抜いてから約2500年の後、スパルタ軍はこの地に戻ってきた。そして、プレミアが行なわれたスパルタの街は、映画の内容が血なまぐさかろうと、この機会を活用しようとしている。

 「この作品は世界中で公開されるでしょう。それによりスパルタを訪れる人々が増えると予想します」と、Sarantos Antonakosスパルタ市長は語った。また、同市長はAFPの取材に対し、「これは市の良い宣伝になります。できるだけ活用したいですね」と述べた。

 「シン・シティ(Sin City)」の作家フランク・ミラー(Frank Miller)のコミック小説を基にした本作品は、紀元前480年、ペルシアの大軍を手こずらせたスパルタ軍の戦いを描いている。このレオニダス率いる300人の兵士たちの自己犠牲的な死闘は、ギリシャの他の都市の連合軍も奮い立たせ、最終的にはペルシア軍を後退に追い込んだ。

 この作品、ギリシャでは批判を浴びている。その対象となっているのは、本作品が古代スパルタ人を血に飢えた獣のように描き、テルモピュライには決して存在しなかった野獣や巨人、鋭い牙の化け物と戦わせたことなどだ。

 「歴史的事実を無視した映画を当局が推進するのは、恥ずべきことである」と、レオニダスと同名の薬剤師Leonidas Kanelliasさんは語った。

 「スパルタ人として、個人的に良い気分ではありません」と語ったのはホテルに勤務するSofiaさん。「でも、恐怖で逃げ出したくなるような時に、彼らがやり遂げたことを思うと涙があふれます」と加えた。

 考古学者も本作品については異論を唱えている。これまで広く知られていたものの、その多くは真実ではなかったスパルタのイメージを利用していると訴える。

 「スパルタ人は強固な軍隊を保持していたかもしれない。しかし、必ずしも軍事国家ではなかった」と考古学者のStella Raftopoulou氏は語った。

 この地域で発掘される家庭用の陶器や寺院の装飾を見れば、スパルタが文化的にも繁栄していたことがわかるとRaftopoulou氏は加えた。さらに、「しかし、こういった文化の繁栄に関する記録は残っておらず、後世の作家たちは政治や軍事にばかり焦点をあててきたのです」と続けた。

 さらに皮肉にも、スパルタの名を世界に知らしめている軍事力に関する考古学的証拠もほとんど見つかっておらず、観光客を魅了することもできないでいる。

 およそ2万人が暮らす現代のスパルタは、ローマ帝国滅亡の跡地に新しく建設されたもので、ペロポネソス半島南部へ旅する人々にとっての途中下車地にとどまっている。

 今日では、頑丈な地元民とオリーブの生産が主な特徴となっているスパルタだが、そこで暮らす人々は、このイメージを変えたいと望んでいる。

 「旅行者の多くは、ギリシャの島々へ向かいます。しかしスパルタにも、汚染されていない美しい海岸や雄大な山岳があるのです」とAntonakos市長は語った。

 本作品のギリシャ公開は8日、米国公開は9日。スパルタの宣伝シーズンは、今始まったばかり。厳しい前評判にもかかわらず、ギリシャ本国だけでも既に2万枚のチケットが売れているという。

 「スパルタ人はどう猛に描かれている。しかし、彼らは結局のところ、戦士だったのですから。それにペルシア軍は400万もの兵士を動員したのですよ」と市長は続けた。

 写真は7日、プレミア会場に掲げられた、同作品の一場面が描かれた巨大な絵を見ながら語り合う親子。(c)AFP/Aris Messinis