【ロサンゼルス/米国 23日 AFP】米国の税務署は近年、アカデミー賞授賞式後、スターたちに振る舞われる豪勢なプレゼントの数々に税金を課し、その総額を抑えようとしてきた。

■宣伝効果狙った企業からプレゼントの嵐

 毎年、アカデミー賞の発表後には、最先端のエレクトロニクス製品をはじめ、あらゆるプレゼントが賞を逃したスターたちに贈られる。米国の国税庁は長年、これを少しでも抑えようと試みてきたが、今のところ成果は現れていないようだ。映画芸術科学アカデミー(The Academy of Motion Picture Arts and Sciences)は昨年8月に、「10万ドルにも及ぶ高級品を贈り続けることが適切とはいえない」と述べた。

 「感謝の気持ちといえども、高額な税金のかかる品々をこのような形で贈るのは不適切なのではないでしょうか」と、同アカデミーのスポークスマンであるレスリー・アンガー(Leslie Unger)氏は決定の理由を説明した。しかしながら、アカデミー賞関係者がどんなに抑制を求めていても、企業側は我こそはと商品をセレブに贈り、自社の製品をアピールしたがっている。

■今回のプレゼントは1人あたり総額約900万円!

 ロサンゼルスを拠点とするマーケティング会社、ディスティンクティブ・アセッツ(Distinctive Assets)のラッシュ・ファリー(Lash Fary)社長は、税規制をかけるこの対策は豊かな富を持つスターに対して効果がないと述べた。過去5年間にわたって、同社は私的に「心ばかりのギフトセット」なるものを、アカデミー賞で受賞に至らなかったスターに贈ってきた。

 今年のプレゼント総額は7万1000ドル(約861万円)。中身は2万6000ドル(約315万円)のラスベガス(Las Vegas)の高級ホテル宿泊権、シーザーズ・パレス(Caesar's Palace)のパッケージツアーから、お菓子の詰め合わせまで様々だ。

 「特に変わったことはありませんね。ただ、中身の時価が明示された紙をプレゼントに添えるようになっただけです。税の取り締まりが私たちのビジネスに及ぼす影響も特にないですし、俗にいう『景品』を得ることで関心が高まったほどです。セレブたちは税金がかかるにしても、どのみち、この特典を受け取ってくれますから」と、同氏は記者に語った。

■受賞を逃したスターが手ぶらというのは、不甲斐ない?

 「スターたちにとっては、もう一枚余分に税申告書を弁護士に提出すればいいだけの話ですから。税金のことなんて考えなくてもやっていけるだけの資産を持っているのです」と、付け加えた。同社は、主にグラミー賞(The Grammys)など各授賞式の主催者と協力関係を結んでいる。このようにして、スイートルームや豪華なレクリエーションをセレブたちに提供しているのだ。

 ファリー氏は、アカデミー賞にノミネートされた人が、授賞式終了後に手ぶらでいるのは不甲斐ないと考え、スターたちにプレゼントを贈るアイデアを思いついた。

 「ベッド・ミドラー(Bette Midler)がエミー賞(The Emmys Awards)の授賞式後、何も持たずに出たことについて不平をもらしたと聞いて、素晴らしいスターたちがこの様な思いをしないようにできたらと思ったのです」と同氏は語る。

 「どれ程お金持ちで有名なスターでも、アカデミー賞を受け取れなかった時はがっかりするものです。ですから、その失望感を少しでも和らげることができればうれしいですし、皆プレゼントを受け取るだけの貢献をしている方ばかりなのです。幸いにも、7万1000ドルというちょっとしたものでも、少しだけセレブたちを元気づけることができるのです」と、ファリー氏は述べる。

■実用的バージョンと豪華バージョンのギフトを用意

 ギフトセットに何を入れるかは、やみくもではなく熟考の上決定される。例えば、「リトル・ミス・サンシャイン」で活躍した10歳の若手女優アビゲイル・ブレスリン(Abigail Breslin)には、成人のノミネート者へ贈られるカザフスタンのウオツカ「スノークイーン(Snow Queen)」などは最適とはいえない。

 「何を贈るかは2つのうちどちらかです。歯磨き粉のようにとても実用的なものか、シーザーズ・パレス・パッケージツアーのように非常に豪華なものかです」とファリー氏は語った。

 また、シルバー・スプーン・エンターテインメント・マーケティング(Silver Spoon Entertainment Marketing)社は主に美容エステやスパなどのサービスを提供している。創設者のLorena Bendinskas氏は、「私たちはもっとプライベートなサービスを提供しています。エステティックトリートメンやパーティーなどでセレブの皆さんをお迎えしています」と語った。

 同社はアカデミー賞授賞式の際、スターたちが2日間利用する「オスカー・ペントハウス(Oscars Penthouse)」も担当しており、ショッピングや娯楽施設なども十分に備えたザ・リージェント・ビバリー・ウィルシャーホテル(The Regent Beverly Wilshire Hotel)の手配を行っている。

■国税庁の取り締まりに批判の声も

 同氏は、国税庁が行う税の抑圧策は大した効果がないと言う。「これではバースデープレゼントを申告しなければならないというのと同じで、ちょっとばかばかしい気がします。飛び抜けて高価なものならまだしも、プレゼントに税金がかかるなんてね…。これでは私たちの誠意の意味がないのです。彼らは頑張っているのに毎日大変な思いをしているのだから」とコメントした。

 「だからプレゼントは、素晴らしい映画を作ってくれたスターたちへの感謝の気持ちなのです。私たちを楽しませてくれる彼らに少しくらいお返ししても良いのではないでしょうか。少しばかりの安らぎを持たせてあげましょうよ」と付け加えた。

写真は2月9日、米ロサンゼルスにて撮影。オスカー像のトロフィー。(c)AFP/ROBYN BECK