【バンコク/タイ 19日 AFP】タイは他国に比べ、ニューハーフなどセクシャル・マイノリティに対する寛大さが知られているが、エンターテインメント分野での活躍はこれまで地元のクラブ止まりに終わってきた。しかし最近、メンバー全員がニューハーフのバンド「ビーナス・フライトラップ(Venus Flytrap)」がメジャー・デビューし、状況を変えつつある。

■スパイス・ガールズがモデル

 ビーナス・フライトラップは、世界的な成功を収めた「スパイス・ガールズ(Spice Girls)」にヒントを得たバンドで、「クール・ビーナス」「ノーティ・ビーナス」「ポッシュ・ビーナス」「スイート・ビーナス」「ホット・ビーナス」のニックネームを持つメンバー5人で構成される。

 一見、お色気たっぷりの「女の子」バンドだが、厳密にはメンバー全員が男性として生まれ、性転換手術を受けて女性となったニューハーフ。音楽市場のニッチ分野を模索していた大手レコード会社、ソニーBMGエンターテインメント(Sony BMG Music Entertainment)から、ニューハーフ・バンドとしては初めてメジャーでのレコーディングを果たした。

 前年12月にリリースされたファースト・アルバム「愛へのビザ(Visa for Love)」は、まだチャート上位には達していないものの、一部の放送局では頻繁に流されているほか、バンコク(Bangkok)中心部で行われた野外コンサートでは、出演が目玉となった。

■レコーディング、アルバム制作には苦労も

 スパイス・ガールズで成功が実証済みの女の子バンドに、もうひとひねりの「工夫」を加えたコンセプトは、ソニーBMGエンターテインメントの女性ディレクター、Amonrat Homhoul氏が考案。100人のニューハーフをオーディションした中から5人を選び、歌唱、演技、ダンスについて1年間の集中トレーニングを行った。
「アルバム作りは簡単なことではない。新人5人だから、制作までには長い時間を要した」

 また女性として歌を録音するにあたり、メンバーらは2、3時間しか高音を出し続けることができなかったため、レコーディングも時間がかかったという。しかしHomhoul氏は、「まだチャートには入ってきていないが、反応はよい」と語る。

 5人のビーナスたちは、ファースト・シングル「だってあなたのレディーだから(Cause I’m Your Lady)」を始めとする自分たちの曲で、ニューハーフに対するタイ社会の見方を変えたいと語る。

 クラブや美人コンテストでも活躍するクール・ビーナス(本名:Dhanade Ruangroongroj)は、「ビーナス・フライトラップはニューハーフである私にとって、エンターテインメント界で働く新たなチャンス」と語った。

 写真はバンコクで7日、ステージを待つビーナス・フライトラップのメンバー。(c)AFP/Saeed KHAN