【ベルリン/ドイツ 16日 AFP】8日から18日まで開催される、第57回ベルリン国際映画祭(The 57th Berlin International Film FestivalBerlinale)で15日、グレゴリー・ナヴァ(Gregory Nava)監督の米国映画「Bordertown」の上映会が行われた。

■実際に起こっている殺人事件を取り扱った映画

 米女優ジェニファー・ロペス(Jennifer Lopez)が主演/プロデューサーを務めた同作品は、米国とメキシコの国境地帯で1993年から300人以上の女性が殺害されている事件を、命懸けで追う女性ジャーナリストを描いたもの。

 実際に起きている同事件の被害者の多くは、北米自由貿易協定(NAFTA)により現れた、外国資本の工場で働く女性たちである。 被害者の母親も出席した上映会後の会見で37歳のロペスは、この映画を誇りに思っていると語った。

 「グレゴリーがこの話を持ってきた時、直ぐに私はやりたくなりました。この映画を作るためなら手助けをすると言いました。理由があって出会ったような気がしたんです」ロペスは語る。

■穴の多いプロットと手厳しい評価

 テーマの重大性と、製作者側の善意にもかかわらず、上映会後の記者からはブーイングが巻き起こった。

 この映画にある多くの危ないポイントの一つである脚本は、ロペスとナヴァが緊密に協力しながら進めた。

 「This isn’t free trade, this is the slave trade!(これは自由貿易ではないわ、これは奴隷貿易よ!)」ロペス演じるジャーナリストのスローガン的な台詞の一つである。

 貧しい労働者の一人が突然完璧なアメリカ英語を話し出すなど、スペイン語と英語を交えた会話部分も又、物語においての危険要素となった。

 更に、ロペスの演じる米国人の主人公は、むらのあるスペイン語にもかかわらず、メキシコの新聞の編集長になってしまう。

 プロットには他にも大きな穴がある。この事件には数人の殺人犯がいると信じられているが、ロペスの仕掛けた罠にかかるのは毎回同じ2人の男である。

 アントニオ・バンデラス(Antonio Banderas)らのキャストの演技も辛口で知られる同映画祭の観客の失笑を買った。

 「アウト・オブ・サイト(Out Of Sight)」などの中級ヒット作にも数本出演しているロペスだが、映画のキャリアは雑多なものになっている。

 今回、映画賞は取れる見込みのないロペスだが、14日にはフアレスの同事件を世間に広く知らせた功績を称えられ、人権擁護団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)により選ばれるアーティスト・フォー・アムネスティ・アワード(Artists for Amnesty Award)を受賞した。

■事件への注目で政府が動くことを期待する遺族

 大規模なビジネス、米国とメキシコの両国、メディアを殺人犯を守る陰謀の一部として描いた同作品の製作中、メキシコ系のナヴァ監督は殺害の脅迫を受けたという。

 「製作費を確保するのには大変苦労しましたが、最終的には自主製作で完成までこぎつけました。ジェニファーなしでこの映画が作られることはなかったでしょう」

 2001年に娘を誘拐、殺害されたNorma Andrade de Garciaさんは記者に対し、メキシコ、米国の両政府への圧力を維持して欲しいと訴えた。

 「この2月始めの12日間で更に3人の女性が殺害されました。政府がこの事件を重要視するまでに後何人が殺されなくてはならないのでしょうか?」Normaさんはこう述べた。

 写真はレッドカーペットに登場したジェニファー・ロペス。(c)AFP/DDP/SEBASTIAN WILLNOW