『男性用コルセット』、次なるおしゃれアイテムとして浮上? - フランス
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【パリ/フランス 14日 AFP】男性用のスカートにメイクアップ、そしてストッキング。ここまでは受け入れることができそうなものだが、ついに男性用コルセットまでもが登場した。かつては女性達の苦痛の種であったこのコルセット、ファッションに関心が高い男性の間では次なる重要アイテムになるかもしれない。
■脚光を浴びるコルセット専門クチュリエ
フランス・パリで活動するコルセット専門のクチュリエ、シルヴェイン・ヌファー氏は男性用コルセットを4年前から作り始め、今や年に30もの「奇妙な」スタンダードモデルを500~60ユーロ(約8万~9万5千円)で販売している。オーダーメイドの場合はこの4割増しの値段となっている。 「男性ファッションのバリエーションに自分自身、物足りなさを感じていました。最初は自分の為に作ったのですが、そのうち作る数がどんどん増えていったという感じです。」と同氏はAFPの記者に語った。 グレーのシルク製コルセットにジーンズを履き、シャツとネクタイとコーディネートしたNuffer氏はコルセットメーカーに勤める母からその技術を学んだ。高さを出し、ウエストを詰め、肩幅は広く、背部分は真っ直ぐに等、その手法は複雑だ。
■意外にも歴史の長い男性用コルセット
男性用コルセットには歴史があり、忠誠の騎士達は背骨を守るためにコルセットを着用していたという。これは現在のバイカーが同様に背骨を守るために使う方法として受け継がれている。後ろで編み上げにし、正面で留め具をはずすタイプのこのコルセットは、1789年のフランス革命の由緒ある時代に基づく。理想主義哲学や経済学に通じていたクロード・アンリ・ド・サン=シモン伯爵 (Claude Henri de Saint-Simon)が、当時一人では着用することができなかったコルセットを改良したものだ。それぞれの部分をひもで縛る新しいアイディアは、互いを助け合うヒューマニスト的思想『サン・シモニアン・ムーブメント(Saint-Simonien movement)』を象徴している。 しかしながらこの男性用のコルセットに対する批判もあり、何本もの骨組みが付いたものを着用して過ごすのはこの上なく居心地がわるいのでは等という声も上がっている。
■有名人たちの衣装も幅広く手がけるコルセット職人
ファッション・スクールで教鞭を執り、このコルセットを実際に着用しているローラン・ルノー(Laurent Renaud)氏はこう述べる。「シャツの上にコルセットを着け、その上からセーターを着ています。普段着としても出かける時にも、いつも着用しています。ただ、慣れてしまって、これがないと落ち着かなくなってしまったのが問題ですね。」
2000年にマドンナ(Madonna)のウェディングドレス用コルセットを手がけたことでも有名な、デザイナーのユベール・バレール(Hubert Barrere)氏はインタビューの中で「男性用コルセットと言っても、チョッキやベストを手直ししたようなものです。」と述べた。「20世紀には軍事用のユニフォームに手が加えられてきました。個人的には、女性のなめらかなボディラインを強調するほうが美しいと思うので、男性用コルセットにあまり興味がありません。」と語るバレール氏は、ドルチェ&ガッバーナやステラ・マッカートニーの為にコルセットを作成するかたわら、マドンナやカイリー・ミノーグ(Kylie Minogue)、イザベラ・アジャーニ(Isabelle Adjani)などのスターのオーダーメード用コルセットも手掛けている。
アレキサンダー・マックイーン(Alexander NcQueen)の為にバレール氏がデザインした金のニシキヘビをイメージしたコルセットは、ナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)が着用したことで、メディアで取り上げられた。そして、この作品でコルセットが女性にもたらす力を最大に見せつけたといえる傑作でもある。
■身体を守るためではなく、表現する『コルセット』
「コルセットを着けた女性は、男性にはない女性本来の魅力を再認識するのです。コルセットは体を守るためだけでなく表現する役割を持っています。着用した女性の体が豊かでパワフルであればあるほど、抑圧するものではなく魅力を引き出してくれるものになると思います。」と、バレール氏は語った。同氏が作るコルセットは一着2000ユーロ(約32万円)。「シルエットを改め、女性らしいラインを強調する」ために、プラスティックよりもばねやスパイラル状のスチール材を用いている。
■服飾史におけるその存在
「コルセットはこの上なく、付け心地の良いものにしたいのです。」と同氏は言う。下着として、そしてファッションの一部として、コルセットは歴史に翻弄されてきた。胴を締め上げ、形づくるために作られたコルセットは、16世紀に登場した。当時のものは、座ることができなかったほど張ったものだった。食事の際には木でできた張り骨を取り外し、前の部分に差し込むか、テーブルの上にカトラリーと並べて置いた。これは男性に対するエチケットのようなものだったという。
19世紀に入ると、コルセットの腰部分は首まわりより2倍の大きさほどになった。きつく締め上げることによる健康への害が叫ばれ、コルセットは女性を抑圧するのシンボルとなった。その後、下着としてのコルセットは、少しづつ変わっていき、伸縮性の生地で作られたブラジャーやガードルに取って代わった。一方、衣服の上から着用されたコルセットは、農奴制、支配、サディズムやマゾヒズムのゆがんだ象徴として扱われるようになっていった。
■ヴィヴィアン・ウエストウッドによって新しい息吹
ところが1970年には、コルセットがまたもやファッション界に戻った。英国のヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)が伝統的衣装にインスピレーションを受けたコレクションの中で新たな解釈を加えコルセットを登場させた。それから約10年後、ティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)やジャンポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)などのデザイナーが、マドンナの『ワールドツアー1990』の為に作った有名な『コルセットブラ』を披露し、のちに香水のボトルに使われるようになった。
「コルセットは女性にとってはかつて受けた痛手のようなものかもしれません。しかし今、コルセットを着けている女性は、自分の魅力をさらに伸ばすために自分の意志で着用している人達なのです。」
バレール氏にとって、コルセットの歴史は円を描くように現代まで繋がっているのだ。写真は2007年2月12日、フランス・パリにて撮影。(c)AFP/MARTIN BUREAU