世界最大のオサガメ、絶滅危機の背景には食用のための乱獲 - マレーシア
このニュースをシェア
【トレンガヌ/マレーシア 9日 AFP】オサガメの大群が浜辺で産卵する光景は、かつてマレーシアの自然の驚異として知られていた。だが2000年以降、この国の浜辺では、オサガメの赤ん坊の姿は、1匹たりとも確認されていない。
■すでに危機的状況を迎えていると科学者は指摘
マレーシアの象徴とも言われるオサガメは、現在、すでに絶滅状態にあると多くの科学者によって指摘されている。原因は、地元民が卵を食用にしていること、沿岸開発が進んだこと、はえなわ漁などの被害に遭っていること、そして、悲劇的な科学上の判断ミスだという。
トレンガヌ大学のChan Eng Heng教授は「正直に言って、この6年間1匹もオサガメの産卵が確認されていないことから判断すると、ほとんど見込みはないでしょう」と語っている。
カメ専門の科学者として世界的に有名なオーストラリア・クイーンズランド州立公園野生生物局(Queensland Parks and Wildlife)のコリン・リンプス(Colin Limpus)氏も 「残念ながら、オサガメの世代交代に十分な数の卵が繁殖活動用に保護されるようになったのは、1980年代後半になってからでした。その時点ですでに、オサガメの個体数は非常に危険な状態まで減少していたのです」と述べている。
■観光の目玉だった産卵シーン
かつてマレーシアは、世界最大のオサガメの生息地だった。中でも東部トレンガヌ州(Terengganu)の浜辺は、産卵場所として世界で10本の指に入ると言われてきた。
また、トレンガヌでは、昔からオサガメ・ウォッチングが観光の目玉だった。産卵シーンも観光対象になっていたのはよく知られていることである。だがリンプス氏は、観光客がオサガメの絶滅に悪影響を与えたとの説は否定している。
「観光客はオサガメもオサガメの卵も殺しませんでしたし、産卵中のメスを邪魔するようなこともしていません。それに1978年には、産卵シーンの観察は非常に狭い区域でのみ許可されるようになりました」(リンプス氏)
■オサガメの卵は珍味、乱獲が最大の原因か
リンプス氏は、オサガメの絶滅危機の最大の原因は密漁にあると指摘する。地元市場でオサガメの卵が大量に売買されているという事実が、絶滅に拍車をかけている。
オサガメの卵のスープは、マレーシア東部では大変な珍味として知られている。1989年に食用にするのが禁止されているにもかかわらず、トレンガヌ州では相変わらず卵の売買が盛んだ。
オサガメの中には、インドネシア東部や日本の海域まで生息地を広げている種もある。科学者らは、そうした種がはえなわ漁などの被害になることも、個体数減少の重大な原因になっていると指摘する。
また、Chan教授は「1970年代には、膨大な個体数のオサガメがはえなわ漁の被害に遭っていました。はえなわ漁の網は、死のカーテンと呼ばれていたものです」と指摘する。
■科学者の科学上の判断ミス
そして、科学上の判断ミスも、危機を招いた原因の一つだといわれる。
オサガメの卵は、熱と震動に対して非常に敏感だ。卵の周辺温度が30度以上ならメスが、28度以下ならオスが生まれるケースが大半だという。
これまで30年間にわたりトレンガヌの浜辺では、繁殖用のオサガメの卵はふたの無い箱に入れ、たっぷりの日光を浴びて育てられてきた。その結果、生まれる赤ん坊ガメはほとんどがメスだったのである。
この事実が明らかになったのが1980年代半ばになってからのこと。そして科学者らがその事実をつかんだのは、1990年代に入ってからのことだった。
写真は、トレンガヌ州ランタウアバン(Rantau Abang)のカメ目・海洋生態系センターで飼育されているアオウミガメ(2007年1月31日撮影)。(c)AFP/TENGKU BAHAR
■すでに危機的状況を迎えていると科学者は指摘
マレーシアの象徴とも言われるオサガメは、現在、すでに絶滅状態にあると多くの科学者によって指摘されている。原因は、地元民が卵を食用にしていること、沿岸開発が進んだこと、はえなわ漁などの被害に遭っていること、そして、悲劇的な科学上の判断ミスだという。
トレンガヌ大学のChan Eng Heng教授は「正直に言って、この6年間1匹もオサガメの産卵が確認されていないことから判断すると、ほとんど見込みはないでしょう」と語っている。
カメ専門の科学者として世界的に有名なオーストラリア・クイーンズランド州立公園野生生物局(Queensland Parks and Wildlife)のコリン・リンプス(Colin Limpus)氏も 「残念ながら、オサガメの世代交代に十分な数の卵が繁殖活動用に保護されるようになったのは、1980年代後半になってからでした。その時点ですでに、オサガメの個体数は非常に危険な状態まで減少していたのです」と述べている。
■観光の目玉だった産卵シーン
かつてマレーシアは、世界最大のオサガメの生息地だった。中でも東部トレンガヌ州(Terengganu)の浜辺は、産卵場所として世界で10本の指に入ると言われてきた。
また、トレンガヌでは、昔からオサガメ・ウォッチングが観光の目玉だった。産卵シーンも観光対象になっていたのはよく知られていることである。だがリンプス氏は、観光客がオサガメの絶滅に悪影響を与えたとの説は否定している。
「観光客はオサガメもオサガメの卵も殺しませんでしたし、産卵中のメスを邪魔するようなこともしていません。それに1978年には、産卵シーンの観察は非常に狭い区域でのみ許可されるようになりました」(リンプス氏)
■オサガメの卵は珍味、乱獲が最大の原因か
リンプス氏は、オサガメの絶滅危機の最大の原因は密漁にあると指摘する。地元市場でオサガメの卵が大量に売買されているという事実が、絶滅に拍車をかけている。
オサガメの卵のスープは、マレーシア東部では大変な珍味として知られている。1989年に食用にするのが禁止されているにもかかわらず、トレンガヌ州では相変わらず卵の売買が盛んだ。
オサガメの中には、インドネシア東部や日本の海域まで生息地を広げている種もある。科学者らは、そうした種がはえなわ漁などの被害になることも、個体数減少の重大な原因になっていると指摘する。
また、Chan教授は「1970年代には、膨大な個体数のオサガメがはえなわ漁の被害に遭っていました。はえなわ漁の網は、死のカーテンと呼ばれていたものです」と指摘する。
■科学者の科学上の判断ミス
そして、科学上の判断ミスも、危機を招いた原因の一つだといわれる。
オサガメの卵は、熱と震動に対して非常に敏感だ。卵の周辺温度が30度以上ならメスが、28度以下ならオスが生まれるケースが大半だという。
これまで30年間にわたりトレンガヌの浜辺では、繁殖用のオサガメの卵はふたの無い箱に入れ、たっぷりの日光を浴びて育てられてきた。その結果、生まれる赤ん坊ガメはほとんどがメスだったのである。
この事実が明らかになったのが1980年代半ばになってからのこと。そして科学者らがその事実をつかんだのは、1990年代に入ってからのことだった。
写真は、トレンガヌ州ランタウアバン(Rantau Abang)のカメ目・海洋生態系センターで飼育されているアオウミガメ(2007年1月31日撮影)。(c)AFP/TENGKU BAHAR