周防正行監督の新作「それでもボクはやっていない」 海外メディア向け会見開催 - 東京
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【東京 2日 AFP】「Shall We ダンス?(Shall We Dance?)」などの軽いタッチの映画で知られる監督、周防正行(Masayuki Suo)の約10年ぶりとなる新作「それでもボクはやっていない(I Just Didn’t Do It)」の海外メディア向け会見が1日、日本外国特派員協会で行われた。
周防監督は本作で、痴漢に間違われた男を主人公に、日本の裁判システムを攻撃している。
実話をベースにした同映画では、警察、弁護士、判事から成り、裁判にかけられた被告のほぼ100パーセントが有罪判決を下される日本の刑事司法制度を痛烈に批判している。
1月20日に公開を迎えた「それでもボクはやっていない」は、29か国で公開され、ハリウッド版リメイクも製作された1996年の大ヒット作「Shall We ダンス?」以来となる周防監督の新作である。
■刑事司法制度への怒りが製作のきっかけに
被告人保護措置の欠如を知った監督は、この映画を撮らなければならないと感じたという。
「こんなことが日本の社会で起きていることに対して、一国民として大変憤慨しました」50歳の監督はこう語る。
「痴漢は非常に恥ずかしい犯罪です。そんなことが日本で起きているというのは不面目です。しかし、それと同じくらい恥ずかしいのは、既に満員の電車に更に人を押し込む鉄道会社の行為です。私たちはただ乗らざるを得ません」
鉄道会社は女性専用車両を導入するなどの措置をこうじてきたものの、定員オーバーの電車を走らせることで、鉄道会社はこの犯罪に加担していると監督は非難する。
しかし、監督は怒りを、事実無根の罪で人の一生を台無しにしてしまう刑事司法制度に向ける。
「映画を最後の最後まで裁判批評で持っていった理由は、これまで会ってきた人たちの裁判での苦しみを理解してのことです」
この映画では面接を受けるために満員電車に乗った20代の男性が、女子高生に腕をつかまれ、痴漢したと責められ、フランツ・カフカ(Franz Kafka)の小説の様な悪夢に引きずり込まれていく様が描かれている。
加瀬亮(Ryo Kase)演じる主人公の主張は警察と検察官により無視され、証拠を積み上げるため何カ月も勾留される。主人公を支える弁護士を演じるのは「Shall We ダンス?」で主演を務め、最近ではオスカー(Academy Awards)ノミネートの話題作「バベル(Babel)」にも出演している役所広司(Koji Yakusho)。
■冤罪を引き起こす日本の刑事司法制度
円滑な裁判進行を望む裁判官は、検察官や警察官に異を唱えずしばしば被告を有罪として扱い、一般人には理解しがたい法律用語を用いると監督は話す。
実際の裁判では、下級裁判所で痴漢の有罪の判決を受けた被告人は、数年の裁判の後に高等裁判所で無罪を勝ち取ったとしてもその時には既に職を失い、うつ病や自殺未遂、家庭崩壊を迎えるケースが多い。
「刑事司法制度に馴染みのない人々が裁判にいかに向き合うかに興味を引かれた。彼らから裁判制度といかに戦ったかを聞いて深く心を動かされた。同時に良い映画の題材になると思った。しかし、これを裁判と戦う家族の感動的なストーリーにしたくなかった。冤罪を引き起こす日本の刑事司法制度を取り上げたかったんだ」
低犯罪率を誇り、ほぼ100パーセントが有罪判決となる日本では、冤罪を弁護する経験のある裁判官は少ないと監督は不満を口にする。
日本では2009年から殺人事件などの重罪において、裁判員制度が導入される。監督は、「新システムによって一般人にも理解し易い言葉が使われるだろう。言葉が変われば考え方も変わってくる」と裁判員制度が現行の裁判を変えてくれることを期待している。
■海外での上映に意欲的
すでにニューヨークとオックスフォードで本作を上映した監督は、さらに海外での上映に意欲的だ。
「今までは自分の作品を海外に持って行こうとは思わなかったが、今作で日本の刑事裁判制度を世界に広く知ってもらいたい」
写真は会見に登場した周防監督。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO
周防監督は本作で、痴漢に間違われた男を主人公に、日本の裁判システムを攻撃している。
実話をベースにした同映画では、警察、弁護士、判事から成り、裁判にかけられた被告のほぼ100パーセントが有罪判決を下される日本の刑事司法制度を痛烈に批判している。
1月20日に公開を迎えた「それでもボクはやっていない」は、29か国で公開され、ハリウッド版リメイクも製作された1996年の大ヒット作「Shall We ダンス?」以来となる周防監督の新作である。
■刑事司法制度への怒りが製作のきっかけに
被告人保護措置の欠如を知った監督は、この映画を撮らなければならないと感じたという。
「こんなことが日本の社会で起きていることに対して、一国民として大変憤慨しました」50歳の監督はこう語る。
「痴漢は非常に恥ずかしい犯罪です。そんなことが日本で起きているというのは不面目です。しかし、それと同じくらい恥ずかしいのは、既に満員の電車に更に人を押し込む鉄道会社の行為です。私たちはただ乗らざるを得ません」
鉄道会社は女性専用車両を導入するなどの措置をこうじてきたものの、定員オーバーの電車を走らせることで、鉄道会社はこの犯罪に加担していると監督は非難する。
しかし、監督は怒りを、事実無根の罪で人の一生を台無しにしてしまう刑事司法制度に向ける。
「映画を最後の最後まで裁判批評で持っていった理由は、これまで会ってきた人たちの裁判での苦しみを理解してのことです」
この映画では面接を受けるために満員電車に乗った20代の男性が、女子高生に腕をつかまれ、痴漢したと責められ、フランツ・カフカ(Franz Kafka)の小説の様な悪夢に引きずり込まれていく様が描かれている。
加瀬亮(Ryo Kase)演じる主人公の主張は警察と検察官により無視され、証拠を積み上げるため何カ月も勾留される。主人公を支える弁護士を演じるのは「Shall We ダンス?」で主演を務め、最近ではオスカー(Academy Awards)ノミネートの話題作「バベル(Babel)」にも出演している役所広司(Koji Yakusho)。
■冤罪を引き起こす日本の刑事司法制度
円滑な裁判進行を望む裁判官は、検察官や警察官に異を唱えずしばしば被告を有罪として扱い、一般人には理解しがたい法律用語を用いると監督は話す。
実際の裁判では、下級裁判所で痴漢の有罪の判決を受けた被告人は、数年の裁判の後に高等裁判所で無罪を勝ち取ったとしてもその時には既に職を失い、うつ病や自殺未遂、家庭崩壊を迎えるケースが多い。
「刑事司法制度に馴染みのない人々が裁判にいかに向き合うかに興味を引かれた。彼らから裁判制度といかに戦ったかを聞いて深く心を動かされた。同時に良い映画の題材になると思った。しかし、これを裁判と戦う家族の感動的なストーリーにしたくなかった。冤罪を引き起こす日本の刑事司法制度を取り上げたかったんだ」
低犯罪率を誇り、ほぼ100パーセントが有罪判決となる日本では、冤罪を弁護する経験のある裁判官は少ないと監督は不満を口にする。
日本では2009年から殺人事件などの重罪において、裁判員制度が導入される。監督は、「新システムによって一般人にも理解し易い言葉が使われるだろう。言葉が変われば考え方も変わってくる」と裁判員制度が現行の裁判を変えてくれることを期待している。
■海外での上映に意欲的
すでにニューヨークとオックスフォードで本作を上映した監督は、さらに海外での上映に意欲的だ。
「今までは自分の作品を海外に持って行こうとは思わなかったが、今作で日本の刑事裁判制度を世界に広く知ってもらいたい」
写真は会見に登場した周防監督。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO