【アブダビ/UAE 31日 AFP】アラブ首長国連邦のアブダビ(Abu Dhabi)はいま、成長の著しい観光市場へ独自の路線での参入を目指している。

 一大ショッピングスポットとして人気を集めるドバイ(Dubai)の後追いではなく、文化財の宝庫としての路線を打ち出す構え。ルーブル美術館のアブダビ版やアートセンターなど、4か所の文化施設の建設がプロジェクトの目玉となる。Saadiyat島が舞台となる同プロジェクトが31日、有名建築家立ち会いのもと発表される。

 このプロジェクトには、ビーチリゾート開発やSaadiyat島やReem島、Yas島の観光開発などが盛り込まれている。

 2006年にアブダビを訪れた観光客はわずか135万人。観光当局は2015年までに300万人まで増加させる計画を進めている。一方ドバイは依然としてペルシャ湾岸随一の観光スポットの座を維持しており、2005年の観光客数は600万人。現在2010年をめどに1500万人へ増やす計画を進めている。

 アブダビの観光当局は観光客の増加を見込み、ホテルの客室数を現在の1万1500室から2015年までに2万5000室に増やす方針。

 計画の財源は豊富である。アラブ首長国連邦の1日当たり250万バレル相当の原油産出量の9割を占めるアブダビは、石油輸出国機構(OPEC)におけるアラブ首長国連邦の地位を支えている。

 しかし2004年11月に建国の祖で初代大統領でもあるザイド・ビン・スルタン・ナハヤン(Zayed bin Sultan al-Nahayan)首長が死去して以降、同国は古いイメージの払しょくと、経済の多角化に取り組まざるを得なくなっている。

 2005年に宮殿様式の豪華ホテルEmirates Palaceが開業し、これまで豊かさの誇示を控えてきた同国の生活水準を対外的に大きくアピールすることとなった。
 原油価格高騰の恩恵を受けた豪華ホテルの開業に続き、アブダビは3000億ドル(約36兆3990億円)規模の投資計画のメインとなる建設計画を開始した。

 Saadiyat島の文化中心地には、グッゲンハイム財団の美術館の中でも最大規模となる現代美術館「Guggenheim Abu Dhabi」のほか、ルーブル美術館との提携を目指す古典美術博物館や海事博物館、イスラム美術館も建設予定。

 2004年にアブダビ政府が設立した建設会社AIDar Propertiesは、Saadiyat島に全7000室、29のホテルを建設予定。そのうちの1つは7つ星のホテルとなるといわれている。またヨットハーバーを3か所建設、1000艘の係留に対応するほか、別荘8000棟、アパート38000室の建設も予定されている。500メートル沖に浮かぶ広さ27平方キロメートルのSaadiyat島の開発に、270億ドルもの資金が当てられることになる。

 一方で、ドバイの影響は依然大きく、ドバイにならう形でアブダビでもゴルフトーナメントなどのスポーツイベントが開催されている。2月3日にはF-1グランプリシーズンの開幕に際して、初の試みとなるイベントが開催される。

写真は30日、アブダビのビーチでくつろぐ住民たち。(c)AFP