【クアラルンプール/マレーシア 30日 AFP】1957年に英国から独立した多民族を有するマレーシアは今年、独立50周年を迎える。

 記念すべき2007年も、国民の間では民族間対立を危ぐする声が高まっている。背景には、1971年施行のマレー系優遇措置「ブミプトラ政策(bumiputras)」の存在がある。中国系、インド系住民を敵対視してきたマレー系住民は近年、急速にその影響力を拡大している。

■高まる民族間の緊張

 人権活動家で弁護士のMalik Imtiaz Sarwarさんは、「事態は制御不能になりつつある。市民の間では現状について懸念が広がり、緊張感が高まっている」と語る。

 Malikさんは、マレー系イスラム教徒が多数派を占める国内で信教の自由を訴えたため、死の脅迫を受けたこともあるという。政府は観光事業振興用に作成したパンフレットに、「平和な多民族国家マレーシア」をイメージした写真を使用しているが、Malikさんは祖国の将来に危機感を抱く。

「民族間の溝が深まるとともに経済が停滞し、結果としてイスラム色が強まる恐れがある。最終的に法の秩序が完全に崩壊、国家が内部崩壊するような事態を恐れている」

 8月31日の憲法記念日に、マレーシアは独立50周年の盛大な式典を計画している。そんな華やかさとは対照的に、国民の多くは現在の事態を招いた原因が分からず困惑している。

 インド系のWaytha Moorthyさんは幼い頃、父親がそれぞれに宗教の異なる友人を何人も自宅に呼び、ヒンズー教の祭典をともに祝ったという。ところが「昨今は、甥や姪にイスラム教徒の友人はなく、(ヒンズー教徒である)甥たちはイスラム教徒の子どもたちと交友関係を結ぶことすら制限され不満そうだ」と語る。

■国民の6割を占めるマレー系住民

 マレーシアの民族構成は、マレー系住民が人口の60%を占め、中国系(26%)、インド系(8%)と続く。民族間対立の原因となっているマレー系優遇措置「ブミプトラ」は、マレー語で「大地の子」を意味する。マレー系起業家による政府補助金活用の促進を狙ったこの優遇政策にもかかわらず、経済活動での中国系住民との格差は埋まらず、政策の見直しを求める声も上がっている。

 一方で政治アナリストらは、特定民族への富の分配をやめ、すべての国民が受益できるような経済発展を目指すべきだと指摘する。

 写真は、首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)の繁華街にある公園で、池のまわりにたたずむマレー系女性のグループ(19日撮影)。(c)AFP/TENGKU BAHAR