【ロサンゼルス/米国 24日 AFP】第79回アカデミー賞(The 79th Academy Awards)の受賞候補が23日、サミュエル・ゴールドウィン・シアター(Samuel Goldwyn Theater)にて発表された。最多の8部門でノミネートされた「ドリームガールズ(Dreamgirls)」だが、最高賞である作品賞(Best motion picture of the year)のノミネートは逃した。

■大方の予想を裏切る「ドリームガールズ」のノミネート漏れ

 60年代のモータウンを沸かせたダイアナ・ロス(Diana Ross)率いる女性R&Bグループ、ザ・シュープリームス(The Supremes)の伝記的映画である同作品は、作品賞ノミネートの有力候補とみられていたが、クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)監督による第2次世界大戦を描いた「硫黄島からの手紙(Letters From Iwo Jima)」との作品賞候補争いに敗れた形になる。

「ドリームガールズ」がノミネートされなかった作品賞受賞候補の座についたのは、マーティン・スコセッシ(Martin Scorsese)監督のクライムムービー「ディパーテッド(The Departed)」と第64回ゴールデングローブ賞(The 64th Annual Golden Globe Awards)の作品賞(ドラマ部門)を受賞し、今回も2番目に多い7部門でノミネートされている「バベル(Babel)」。

 その他、作品賞にノミネートされたのは、風変わりな家族のロードムービー 「リトル・ミス・サンシャイン(Little Miss Sunshine)」とダイアナ元皇太子妃の死をめぐる英国王室の動揺を描いた「The Queen」。

 発表の場に居合わせたメディア関係者やオーディエンスらからは、ブロードウェーミュージカルの映画版である「ドリームガールズ」が作品賞と監督賞(Achievement in directing)でノミネーションを逃したことにざわめきが起こった。その代わり、同映画は助演男優賞(Performance by an actor in a supporting role)、助演女優賞(Performance by an actress in a supporting role)、美術賞(Achievement in art direction)、衣裳デザイン賞(Achievement in costume design)、音響賞(Achievement in sound mixing)、3曲が主題歌賞(Achievement in music written for motion pictures)のノミネートを果たしている。

 主催団体である映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences)のシド・ギャニス(Sid Ganis)会長は発表後、「ドリームガールズ」の主要部門でのノミネート漏れについて語った。「もしサプライズを期待している人がいるとしたら、これがそれになるだろう。今回の賞レースは大きく、開かれたものだ」

■監督賞はイーストウッドvsスコセッシ因縁の対決

 監督賞の受賞候補には、今シーズンこれまでの主要賞レースからは取り残されていた感があるクリント・イーストウッド監督(「硫黄島からの手紙」)と、「ユナイテッド93(United 93)」を手掛けたポール・グリーングラス(Paul Greengrass)監督が入っていることも注目だ。

 これまで「タクシー・ドライバー(Taxi Driver)」や「レイジング・ブル(Raging Bull)」、「グッドフェローズ(Goodfellas)」などの名作で、5度にわたり監督賞にノミネートされたが、受賞はまだ一度もないスコセッシ氏は、今回の本命とみられている。しかし、現在64歳のスコセッシ監督は、2度の監督賞受賞経験を持つイーストウッド氏の出現に気が気でないことだろう。ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)紙の「theenvelope.com」にコラムを寄せているトム・オニール(Tom O’Neil)氏も「イーストウッドの登場はスコセッシにとって最悪の悪夢だろう」と読んでいる。

 76歳のベテラン俳優で名監督のイーストウッド氏は、「ミリオン・ダラー・ベイビー(Million Dollar Baby)」で2年前の同賞で作品賞と監督賞を獲得し、スコセッシ氏の「アビエイター(The Aviator)」の同2部門受賞を阻んだ張本人である。

 マカロニウエスタンのカウボーイ役から70年代、「ダーティハリー(Dirty Harry)」シリーズでタフガイのイメージを定着させたイーストウッド氏の「硫黄島からの手紙」は、「父親たちの星条旗(Flags of Our Fathers)」と共に、第2次世界大戦を米国側と日本側の両方の目線から撮った2部作の後編であり、硫黄島を舞台に、終盤に近づく戦争での日本軍と米軍の壮絶な戦いが描かれている。

 同部門の他の受賞候補者は「The Queen」のスティーヴン・フリアーズ(Stephen Frears)監督と「バベル(Babel)」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(Alejandro Gonzalez Inarritu)監督。

■俳優部門のノミネートにも個性的な顔ぶれがそろう

 主演俳優賞の部門でも、なかなかの驚きが待っていた。

 まずは主演男優賞(Performance by an actor in a leading role)。予想通りのノミネートとなったのは「The Last King of Scotland」で実在したウガンダの独裁者、イディ・アミン元大統領(Idi Amin)を演じたフォレスト・ウィテカー(Forest Whitaker)。一方、「Venus」で8度目のノミネートに輝いたアイルランド人俳優ピーター・オトゥール(Peter O’Toole)が、「アラビアのロレンス(Lawrence of Arabia)」で初めてノミネートされたのは実に45年前のこと。

 アイドルスターから実力派俳優に成長したレオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)もノミネートされたが、彼がノミネートされたのは「ディパーテッド」で演じた犯罪一家の下に生まれながらも警察官を志す青年役ではなく、紛争ダイヤモンドをテーマにした「Blood Diamond」で演じた南アフリカ人の密売人役であったことも興味深い。他には「幸せのちから(The Pursuit of Happyness)」のウィル・スミス(Will Smith)と「Half Nelson」のライアン・ゴスリング(Ryan Gosling)がノミネートされている。

 主演女優賞(Performance by an actress in a leading role)の受賞候補者は今回珍しく、“なるほど”といった感じで、過去に高い評価をされている女優陣が連なっている。3人が英国人というノミネートの先陣を切るのは「The Queen」でエリザベス女王(Queen Elizabeth II)を熱演したヘレン・ミレン(Helen Mirren)。ミレンは同映画で第64回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)に輝いている。

 同じく英国出身のジュディ・デンチ(Judi Dench)は「Notes on a Scandal」で、ケイト・ウィンスレット(Kate Winslet)は「Little Children」でそれぞれノミネートされている。

 メリル・ストリープ(Meryl Streep)は「プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada)」で14度目のノミネートを果たし、スペイン人女優ペネロペ・クルス(Penelope Cruz)は、ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodovar)監督の「Volver」で初ノミネートとなった。

 クルスにとって唯一残念だったのは「Volver」が外国語映画賞(Best foreign language film of the year)に意外にもノミネートされなかったことだ。クルスは主演女優賞へのノミネーションをペドロ・アルモドバル監督にささげた。「このノミネートは私のものである以上に監督のものです」

  助演女優賞には、オスカー受賞歴のあるオーストラリア人女優、ケイト・ブランシェット(Cate Blanchett)が「Notes on a Scandal」でノミネートされ、助演男優賞にはコメディー俳優として人気を得たエディ・マーフィー(Eddie Murphy)が「ドリームガールズ」でノミネートされている。

 その他の助演女優賞には、「ドリームガールズ」のジェニファー・ハドソン(Jennifer Hudson)、「リトル・ミス・サンシャイン」で演じた10歳のアビゲイル・ブレスリン(Abigail Breslin)、「バベル(Babel)」から菊地凛子(Rinko Kikuchi)とアドリアーナ・バッラーザ(Adriana Barraza)の2人がノミネートされている。

 助演男優賞には「リトル・ミス・サンシャイン」のアラン・アーキン(Alan Arkin)、「Little Children」のジャッキー・アール・ヘイリー(Jackie Earle Haley)、「Blood Diamond」のジャイモン・ハンスゥ(Djimon Hounsou)、「ディパーテッド」のマーク・ウォルバーグ(Mark Wahlberg)がそれぞれノミネートされている。  

写真はノミネーション発表に登場した女優サルマ・ハエック(Salma Hayek、左)と映画芸術科学アカデミーのシド・ギャニス会長。(c)AFP/Getty Images Kevin Winter