【北京/中国 16日 AFP】アジア開発銀行(Asian Development Bank、ADB)は、中国における食中毒発生患者数が、少なくとも年間3億人に達するという調査を発表。蔓延する食中毒が、社会的・経済的に多大な被害もたらす可能性があるとの警告した。

■食中毒による被害総額はGDPの0.2~0.9%に相当

 ADBは、同組織のウェッブサイトで公表した報告書は、「中国の食品衛生状況は、過去数年間に楽観視できるレベルまでには改善されなかった。食中毒が与える社会的・経済的被害は深刻なものだ。社会の安定を脅かす可能さえある」としている。

 中国では食中毒が日常的に存在しているが、同報告書は、政府が問題解決に向けて本格的に取り組まなければ、2002年から03年にかけて流行した重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome、SARS)と同規模の多大な損害を受ける危険性があることと指摘している。

 中国では、食中毒による被害総額が、年間で168元(約2億5000万円)から360億元(約5542億円)にのぼる年がある。この金額は2005年の国内総生産(GDP)に換算すると0.2%から0.9%に相当する。

■遅れる食品衛生法整備、北京五輪への影響も懸念

 また、大規模な食中毒被害が発生した場合、観光などの国内産業をはじめ、2008年の北京五輪、2010年の上海国際博覧会(Shanghai World Expo)、 広州アジア競技大会のような注目度の高いイベントにまで、影響が及ぶだろうと予測している。さらに、2005年に276億ドル(約3.3兆円)の収益を上げた国内の食料輸出産業にも、大きな損失をもたらすだろうと述べている。

 ADBは「中国では基本的な食品衛生法が定められておらず、また食品衛生を確立する法的枠組みも整備されていない」との現状を指摘し、「中国政府は、国民の健康を最優先に考える強力な、食品衛生の政府管理機構を設立すべきだ」と主張している。
 
 現在、中国では9省庁がそれぞれ個別に食品衛生に関する基準や規則を制定しており、それらが重複したり矛盾した内容になっている場合もあることから、混乱が生じているという。

 写真は上海のレストランで、スープを運ぶウェイトレス。(2003年5月8日撮影)(c)AFP/LIU Jin