【リスボン/ポルトガル 14日 AFP】独身で子供のいない資産家が、財産を70人の「見知らぬ人」に相続した。70人は、無作為に電話帳から選んだという。

 週刊新聞紙「Sol」によると、Luis Carlos de Noronha Cabral da Camaraさんは、リスボン(Lisbon)の登記所で1988年、2人の立会人のもと一風変わった遺書を残した。Camaraさんはその13年後に42歳で自然死を遂げている。

■登記所役員も混乱

「理由は明白。知らない人に財産を残してびっくりさせたかったんだ。彼の娯楽だよ」と、Camaraさんの数少ない友人で立会人の1人でもあるAnibal Castro Vilaさんは同紙に語った。さらに、「登記所の職員は『リスボンの電話帳を見せてくれ』と言われ、でたらめに彼が名前を選び出したのを見てびっくりしていたよ。職員の女性は彼が正気かどうか確かめるために何度か質問していたが、彼はすこぶる正気だった」と述べた。

 Camaraさんの相続人たちは、現在も財産の分配を待っている状態。内訳は、リスボン中心部にある12部屋のアパートが1棟、歴史ある北部の街ギマラインス(Guimaraes)近郊の一軒家、自動車が1台、銀行口座の2万5000ユーロ(約388万円)。

■遺書の信ぴょう性疑う「相続人」

 ほとんどの人々たちは当初、まったくの他人が自分たちを相続人として指名する内容の手紙の信ぴょう性を疑った。
「詐欺だと思って怖くなったわ。だって毎日のように、高齢者を狙った詐欺を耳にするでしょ」と語るのは、相続人の1人である76歳の女性。

 Camaraさんは1959年にリスボンの裕福な家庭に生まれ、一度も結婚せず仕事もしなかった。近所の人の話では、世間とのかかわりをほとんどもたず、私生活の大部分を家で本を読んだり、音楽を聴いたりして過ごしていたという。

 写真はユーロ紙幣(イメージ写真)。(c)AFP/Aamir QURESH