【パリ/フランス 11日 AFP】女性の美しさは時代とともに変化するものだ。その魅力の構成要素を特定するのは非常に困難である。なぜなら、美しさの概念とはファッション、文化、民族、個人の嗜好によって変動するものであるからだ。

■普遍的な美の水準

 例えば、ヴィクトリア朝の英国ではおちょぼ口が美人の証と言われていたが、現在その人気は没落。西洋の女性は少しでも口を大きくふっくら見せようと躍起になっている。また、嗜好の対象も多様に変化。首筋、うなじ、足首、ふくらはぎ、指先、メイク、ヘアスタイルなど、個人によってその趣向は異なる。女性が社会の中で活躍し、成功を収めるにつれ理想的とされる女性の体型にも変化が出た。50年代にはマリリン・モンロー(Marilyn Monroe)の体型が理想とされたが、現在ではスリムな体型が魅力的とされている。この世に普遍的な「美の基準」など存在しないのであろうか。

 この疑問に対する進化心理学者の回答は「ノー」である。

 ダーウィンの進化論が述べたように、遺伝子は適合性と存続性という2つの性質を持ち合わせている。この遺伝子と同様に、理想の体型も時代と共に変化し、数々の流行を生みだしながら現在まで受け継がれてきた。これに対し、テキサス大学、オースティン大学、ハーバード大学が協力し「時代を超えて美しいと記述されてきた女性の身体部位はどこか」という調査を実施した。調査対象は、16~18世紀に発行された英語の書物と、中国やインドといったアジアの古典文学だ。

■いかなる時代も‘くびれたウエスト’

 バスト、ヒップ、太ももといった基本的なパーツは、予想通り多くの書物の中で取り上げられていたが、その表現方法は時代により様々であった。その中で、唯一不動の存在となったものが‘くびれたウエスト’である。英文学では、「細い枝のように細いウエスト」といった、細さに対する表現が65回登場した。細身の体型がもてはやされる以前の時代には、ふくよかな体型に対する称賛の言葉も多々登場する。しかし、細身であろうがふくよかであろうが、ウエストに対してはすんなりとした‘くびれ’が求められるのだ。

 アジアでは、‘くびれたウエスト’はより重宝される傾向に。インドの叙事詩2冊の中からは35回も‘くびれ’に対する記述が登場。対照的に、他の身体部位は全体をトータルしても26回程度に留まった。中国詩集1冊に登場した‘くびれ’に関する記述は17回。一方、バスト、ヒップ、太ももに対する表記は皆無だった。しかし、脚を愛でる記述は多数登場した。
 では、なぜ‘くびれたウエスト’は時代と民族を越え、理想的とされてきたのだろうか。

■健康と繁殖力の証

 研究者によると、‘くびれたウエスト’は健康と繁殖力の証なのだという。それ故に、男性は遺伝子を次世代に継ぐ高いポテンシャルを秘めた‘くびれ’に、本能的に引きつけられるのだという。また、現代の研究では、過度に肥えた腹部は、女性ホルモンの減少に繋がり、様々な病気を引き起こすということが判明している。しかし、現代の医学的知識が誕生する以前からヨーロッパでもアジアでも‘くびれたウエスト’を理想の美として掲げていたことが今回の調査で判明した。美には様々なバリエーションが存在するが、‘くびれたウエスト’の魅力は不朽のようだ。
 なお、今回の調査結果は、英国雑誌『ロイヤル・ソサイエティB(Royal Society B)』に掲載予定である。写真は2005年9月7日、スペイン・マドリードにて撮影。(c)AFP/PIERRE-PHILIPPE MARCOU