【バグダッド/イラク 9日 AFP】2006年12月30日のサダム・フセイン(Saddam Hussein)元大統領の刑執行後の様子を映した新たなビデオ映像が9日、インターネット上で公開された。今回の衝撃的な映像では、フセイン元大統領の首が激しくねじれ、出血している様子まで確認できる。

 携帯電話のカメラで撮影されたものと見られる新たな映像は、合計27秒。むごたらしい映像が公開されたことにより、元大統領の刑執行手順、ならびに執行後の遺体の扱いに対して、イラク国内であらためて抗議の声があがるとみられる。

■ 首のねじ曲がった映像

 問題の映像は、まず白い布で覆われストレッチャーに乗せられた元大統領の遺体をカメラが映し出し、さらに頭部のほうへと移動していく。頭部が映し出された段階で、白布が引きはがされ、元大統領の顔があらわになる。首が右方向に激しくよじれ、左あごのあたりから出血しているのが確認できる。左ほおに血がついているようだ。

 映像には、隠し撮りした人物のものと思われる音声も録音されており、頭部の白布を引きはがす際にひとりが、「早くして。早く。時間がないよ」と慌てた様子で命じているのがわかる。さらに続けて別の人物が、「アブアリ、おまえがやれよ」などと言う声も聞こえる。

■ 死刑直前の映像も流出

 元大統領の刑執行時の映像については、執行直後にすでにインターネット上で公開されていた。やはり携帯電話のカメラで隠し撮りされたもので、絞首台の床が開くまで、警護の者たちが元大統領に激しい言葉を浴びせているのが確認できる。そのうち、シーア派の警護備員と見られる人物は、ほかの警護員たちが元大統領の首に縄をかける間も、しきりに元大統領を罵倒している。ほかの警護員は、「ムクタダ、ムクタダ!」と、元大統領の政敵、シーア派強硬派指導者ムクタダ・サドル(Moqtada al-Sadr)師の名前を連呼している。これに対し元大統領は「地獄に落ちろ」と答えているようだが、音声は不鮮明だ。

 元大統領の刑は、バグダッド北部の軍事基地で執行された。薄暗い絞首場に連行された元大統領は、怒ったような表情だが、落ち着いた様子でほこりまみれの絞首台に立ち、両手を後ろ手に縛られて、首に縄をかけられる。絞首台の床が開く瞬間、元大統領は最期の祈り「shahada」を口にしたようだが、これも途中で途切れてしまってはっきりとは聞こえない。

 刑執行の様子を映した映像がインターネットで公開されたことで、イラクのスンニ派住人は激しく抗議。多数派であるシーア派との対立がいっそう色濃くなった。

 各国首脳陣の間からは、一部、元大統領は殉教者となったとの声も聞かれる。

 写真は、フセイン元大統領の葬儀を携帯電話のカメラで撮る男性。(c)AFP/DIA HAMID