【台北/台湾 5日 AFP】日本の新幹線技術を海外で初めて採用した「台湾高速鉄道」が5日、営業運転を開始した。従来4時間半かかった南北の2大都市間の移動が1時間半に短縮されることから、台湾全土にもたらす経済効果が期待されている。

 工事の遅れから、当面は台北(Taipei)市に隣接する板橋(Panchiao)駅と高雄(Kaohsiung)駅間(345キロ)の営業となる。板橋駅と台北駅間(7キロ)は、翌2月以降に開通する見通し。最高時速300キロで走る高速鉄道が完全開通すれば、台北―高雄間が1時間半で結ばれ、国内が容易に日帰りできる「1日生活圏」となる。

■日欧の技術混在で安全性を危ぶむ声も

 日欧の技術が混在する高速鉄道に対しては、以前から安全性を危ぶむ声が上がっていた。政府により厳しい安全基準が設けられたが、これまで試験走行中に脱線事故が2回発生している。また、当初の予定では2005年10月の開業予定であったが、技術的問題などにより開業が大幅に遅れていた。

 これらの問題にもかかわらず、国民は台湾高速鉄道に熱い期待を寄せている。開業日の朝7時、台北の板橋駅などを出発した初運行の列車には大勢がつめかけた。

 開業から10日間は「お披露目」のため通常運賃を半額にしたこともあり、乗車券が8万枚以上購入された。その一方で、自動券売機の故障が相次ぎ、台湾高速鉄路株式会社(Taiwan High Speed Rail Corporation)の関係者が謝罪するといった場面もあった。ある乗客は、1000台湾ドル(約3700円)の紙幣を券売機に投入したところ、おつりに硬貨数枚が戻ってきただけだったという。


 高速鉄道の開業により、沿線8駅の周辺にある土地の価格が急騰した。大勢の地元農業従事者らが、元は水田やサトウキビ畑だった土地を売却し、裕福な資産家になった。

 一方、国内航空会社は高速鉄道の開業で大きな打撃を受けるとみられている。運輸省当局によると、すでに航空会社数社が運行便を削減したり、企業合併の話を進めるなどしているという。

 台湾高速鉄道は、1998年に日本の企業連合が300万ドル(約3億6000万円)で受注した民間事業。電化や信号、操作システムなどの日本の新幹線技術を導入して開発された。(c)AFP


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