【5月12日 CGTN Japanese】日本や中日関係の状況や、その年ごとの変化を総括する中国の研究書『日本青書 日本研究報告』最新版の発表会が8日、北京市内の中国社会科学院日本研究所で行われました。2023年版とともに、新型コロナウイルスの感染拡大で発表会が延期された2022年版の編集担当、執筆者代表、出版社代表ら約50人がともに出席し、会場では執筆過程で気づいたことや今後の日本研究の注目点などについての意見発表が行われました。

 中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長は席上、日本研究をする際の国際情勢の変化と日本自身の「内なる発展のロジック」という二つの視野の必要性を訴え、中日関係の現状を「包括的かつ弁証法的に捉える」ことを訴えました。

 楊所長は、保護貿易主義の台頭を背景に起きた中米対立の長期化、パンデミックの発生、ロシアとウクライナの衝突激化などを背景に挙げ、「日本の既存の安全保障や発展のモデル、政策のアプローチが新たな試練にさらされている。ただ、そうした変化に対し日本は受身であったのではなく、意欲的に、進取的な姿勢で臨んできた」と指摘しました。また、「新しい資本主義」のもとで、効果的な経済成長と公平な所得分配体系がいまだ確立されていない中、「安全保障分野が現状を打破するための戦略的突破口とされている」と論じ、従来の基幹産業の低迷に対して軍需産業が台頭する現状に強い懸念を示しました。

 楊所長は一方で、中日関係の「両面性」もかつてないほどに拡大しているとする見解をも示しました。楊所長は「海上での領有権争いをめぐり、戦略的膠着(こうちゃく)期に入った。日本は日米同盟を基軸に周辺国を取り込んで、中国を牽制(けんせい)するための包囲網を築きつつある」と現状を分析した上で、「だからと言って、中日関係が沈み込んでいく一途を辿っていると思わない」と述べました。

 楊所長はそう考える根拠について、「両国はこれまでの半世紀余りにわたって、経済分野で緊密な関係を構築してきた。中日の間には構造的な相互補完性がある。このことは、双方が協力する上での土台である。日本の有識者も指摘するように、中国と協力することこそが、21世紀の日本にとって最善の安全保障だ」と説明し、さらに「中日関係にある協力と対立、不変のものと変化するものを包括的かつ弁証法的に捉える必要がある」と述べました。

 中日関係の展望については2023年版『日本青書』も、「逆境の中、中日の関係者は両国関係の悪化を食い止めるために様々な努力を行っており、成果も上がっている」ことに着目すべきと論じ、「平和共存、協力とウィンウィンが両国関係の唯一の正しい選択肢だ」と強調しました。

 2022年版と2023年版の『日本青書』はいずれも、中国の民間学術団体である「中華日本学会」と政府系シンクタンク「中国社会科学院日本研究所」の共同企画によるもので、28人の執筆者が計40本の論文によって、当該年度の日本の政治、経済、外交、社会、文化、中日関係などをパノラマ的に総括しています。

 なお、現在は2024年版の「日本青書」の編集作業が進められているとのことです。(c)CGTN Japanese/AFPBB News