【4月23日 AFP】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の運営状況について精査していた独立調査団は22日、「中立性にかかわる問題」が若干認められたとする報告書を公表した。一方で、UNRWAが「テロリスト」を職員として採用していると主張するイスラエルについては、裏付けとなる証拠を提示しなかったとしている。

 イスラエルは今年1月、UNRWA職員の一部が昨年10月7日のイスラム組織ハマス(Hamas)の越境攻撃に関与した疑いがあると主張。これを受け、UNRWAへの資金拠出国の間では資金拠出を停止する動きが広がり、その額は一時、計4億5000万ドル(約700億円)に達した。

 スウェーデン、カナダ、日本、欧州連合(EU)、フランスなどは拠出を再開したが、米国と英国などは依然、凍結している。

 調査団は54ページから成る報告書で、UNRWAには中立性を担保する仕組みがあるにもかかわらず、職員がSNS上で偏った政治的メッセージを投稿している事例や、UNRWAが運営する一部の学校で「問題のある内容」を含む教科書が使用されている事例など、「中立性にかかわる問題がある」ことが分かったと指摘。

 一方で、UNRWAが400人以上の「テロリスト」を雇用しているとのイスラエルの主張については、「裏付けとなる証拠は提供されていない」とした。

 その上で、UNRWAが「パレスチナ人のための人間開発や経済発展に向け、他に代わるもののない不可欠な存在」であることに変わりはないと結論付けている。

 UNRWA側は調査結果を評価。国連(UN)のアントニオ・グテレス(Antonio Guterres)事務総長は、調査団の勧告内容を受け入れると表明した。

 イスラエルは、報告書は「問題の深刻さを無視し、表面的な解決策を提示するだけで、ハマスがUNRWA内部に広く浸透している問題に対処できていない」と非難した。(c)AFP