【8月19日 MODE PRESS】今や私たちの生活にすっかり定着してきているネット通販。2009年には3.36兆円だった小売業のネット通販の市場が2012年には9.1兆円規模へと拡大し、野村総研の試算によると2016年には14.5兆円の市場が見込まれていると言う。

 私自身も現在韓国ブランドを取り扱うネット通販サイトの「ISHOO」のディレクションをしていることもあり、今回のコラムでは日本における韓国のネット通販を探っていこうと思う。

~韓国ネット通販の勢いとは?

 韓国のネット通販の中でも代表的なサイト「D HOLIC」。しかしサイト内では「韓国」や「Korea」というワードを公開していないが他社の韓国ネット通販サイトと類似している点があるため総称されている。

■勢いのある韓国ネット通販サイトの共通点とは?

 まず、第一に特徴的なのが商品画像の枚数と言えるであろう。ざっと見ただけでも10枚が最低ラインといえるほどさまざまな角度からモデルの着用感を想像することができる。

 特に「Bongja」は水着の商品画像を撮るためにセブ島ロケを決行する等、ファッション雑誌顔負けのクオリティーの高い写真を1アイテムごとに掲載している。週に4~5回行われるというロケ撮影では、雰囲気のいいカフェやウィンドウショッピング中のような町並みを選ぶことが多く、その写真がユーザーにとって『自分の日常的なシーン』を連想させる為、購買意欲に繋がるのだと考える。

 しかし韓国の冬と言えばマイナス10度以下まで気温が下がる為、「DABAgirl」では、寒さを回避する為だけに社内に撮影用のロケスタジオを完備するなど、ネット運営の比重の多くを商品写真に置いていることが見えてくる。

 さらに、モデルと専属契約を結んでいるサイトも多く、サイトでの露出が増えるたびにモデルのファンも増える。中でも特にモデルの打ち出しが強いSTYLENANDAの看板モデルSORAちゃんのinstagramのフォロワーは116万人を越え、サイト内の『レビュー機能』でも“SORAちゃんの髪型が可愛い!”“SORAちゃんを真似したい”と書き込みがあるなど、アイコンとしての存在感を高めている。

 つまり、目的買いではなく「雑誌感覚」や「ウインドウショッピングを楽しむ」といった動機でサイトを訪れる人を飽きさせないのである。

■縦よりも横に広げる商品展開

 次に特徴的なのが、毎日新作が入荷し、短期間で売り切るというサイクルである。雑誌のように一ヶ月先に使えるアイテムの提案ではなく、ジャストシーズンアイテムが毎日サイトに入荷し、人気のアイテムなどは2週間以内にすべて売り切ってしまうこともあるそうだ。

 アイテム数を極端に増やし、少ない在庫数で運営する方法が多く、だいたいのサイトが韓国国内に自社工場があるため、人気のアイテムが品切れしたとしても、すぐに増産することも容易いのである。

■デメリットをカバーする「おまけ効果」

 楽天やAMAZONがこれほどまでに当日発送を打ち出している中、一つだけ課題があるとすれば、配送のスピードではないだろうか。一週間で届けば早いほうで、以前私が某韓国ネット通販を利用した際は、商品を頼んだことすら忘れてしまった頃にやっと届いたこともあった。それは極端な例であるが、上記のように商品が遅延した際には“遅くなってごめんなさい”という手紙と共に、プラス一点のコスメやマニキュアがおまけとして同梱されていた。現実的な話、原価からすればコスメ一つサービスしてもたいした金額にはならないのだろうが、サイト内で「商品が遅れたら○○をプレゼント!」なんて表記がない為、“私だけ”という特別感を提供することができるのだろう。

 これほどまでにサイト内でのアプローチ力が高ければ、韓国ファッション=安くて手に届く価格という定義は、サイトに立ち寄る初めの第一歩にしか過ぎず、サイトのファンとなるヘビーユーザーが生まれやすいサイクルが作られているのではないだろうか。【大田明弥】
(c)MODE PRESS

【関連情報】
新連載:大田明弥が韓流女子を探る!『第1回』『第2回』『第3回』
<参考サイト>
ISHOO
D HOLIC
Bongja
DABAgirl
STYLENANDA