【2月28日 MODE PRESS】 ~気の毒なほど不潔なマネージャー~  先日、何気なくテレビを見ていたら東京を代表するホテルの支配人がインタビューを受けていた。とにかく画面に釘付けなったのが、驚くほどの顔のテカリ。あれは皮脂なのか、それとも緊張から滝のように流れる汗なのか、判然としなかったが、ライトに照らされてその異様な肌のギラつきが否応なくクローズアップされていた。  すぐさまツイッターのハッシュタグでその番組をリアルタイム検索をしてみた。「気持ち悪い」「ホテルのイメージダウン」など辛辣な言葉が並んでいた。きっと、皆、インタビューの内容はほとんど覚えていないだろう。だが、そのテカリだけは強烈な印象を持って記憶に植え付けられた。本来の目的であるはずの話よりも、決して好ましくない印象だけが残っているのだ。あのホテル名を聞くだけで、テカった支配人のホテルと思ってしまう。少なくとも私はそうだ。 ~案の定、発言内容よりも見た目で減点~  ネット上での反応は案の定とも思ったが、一方で私は当該支配人をひどく気の毒にも思った。はるか壇上にのぼって声が届かないわけではない普通の個別のインタビューなのだから、ホテルの社員なり、テレビ局のクルーなり誰かが「汗を抑えましょうか」と言えば回避できたはず。そこになんとなくイジワルなものを感じてしまうのは、私の見方が穿っているのだろうか?  こんな事例は他にいくらでもある。例えば、政治家が答弁をするときその姿はテレビに映し出される。ハイビジョンのため襟元にフケのひとつでもあれば、それはくっきりと映ってしまう。一体、秘書は何をしているのだろう。  アメリカのドラマなどを観ていると、イメージを何よりも大切にする政治家のプロデュース戦略にはすさまじいものがあるではないか。「それはドラマの話。現実とごっちゃにするな」という人がいるかもしれない。 しかし、J・F・ケネディがスタイリストを雇って、ニクソンとのテレビ討論に臨んだのは有名な話。もちろん結果は皆さんがご存知の通り。こう考えると、自分のテレビ映りさえも気遣えない人間に国の舵取りを任せてよいものか? ~清潔は目に見えないが、不潔は見える~  もし、あなたの食事をサーブしてくれる人の爪に垢が溜まっていたら?   もし、あなたの弁護士がサインするべき書類をめくるときに舐めた指を舐使ったら?  もし、あなたの主治医がくしゃみを手で受け、そのまま触診しようとしたら?  もし、お説教中の上司の鼻毛が出ていたら?  人前に出るということは、リスクが伴う。社会的な責任が重くなるほど、人前に出る機会も増え、それだけ多くの人から見られる。細かくチェックされ、見た目やほんの些細な仕草だけで、人間性までも誤って判断されることだってある。賢い人ならば、そこにリスクヘッジを施すのは当然ではないか。  もちろん、ここで男性も女性のように美しさを追求しろと言っているのではない。清潔感を意識することが必要だと言っているのである。極端な話、爪がキレイに切りそろえられていても、もしかしてその給仕の人は直前にトイレ行って、手を洗っていないかもしれない。これは、どうみても不潔だ。だが、見た目は清潔感がある。なんとも皮肉な状況。でも、我々はそれを見ただけでは判断できない。あとは相手を信用するしかないのだ。 ~不潔であることは人間性さえ貶めるのかも~  しかし、最初から不潔に見えてしまう人は確実に損をする。なぜなら、見た目で信用するかどうか判断するスタートラインにさえ到達できないのだから。「衣食足りて礼節を知る」と言うが、昨今では「身だしなみ足りて信用を得る」と言い換えてもいいのかもしれない。  このような状況の中でも、まだ「オレには美容なんて、スキンケアなんて関係ない」と思っている人はいるだろう。であれば、男はもっと打算的なるべき。男性美容の専門家がこういう提案するのもなんだが、「一見、清潔に見える」ところから始めてもいい。なんちゃってでも「清潔感」を意識することにより、通常の感覚を持った人ならば、本当に「清潔でいる」方へとシフトしていくものだから。(完)【藤村岳】 プロフィール DANBIKEN~男性美容研究所~を主宰する男性美容研究家。 男性の身だしなみの専門家としてテレビ・ラジオの出演や、雑誌・ウェブでの執筆活動を行う。「美しくなるよりも、嫌われない美容」が男性には必要とのモッ トーがあり、やりすぎない男性美容を提案している。 また、男性のためのパーソナルカウンセリングや講演・イベントなども開催。 最近は男性コスメ商品の企画開発、コンサルティングなども行っている。 (c)MODE PRESS 【関連情報】 特集:メンズ美容~その価値観の変遷(全6回) <インフォメーション> 男性美容研究所 公式サイト<外部サイト>