【11月29日 MODE PRESS】 ~スメルハラスメントって何?~  「スメルハラスメント」という言葉がある。これは悪臭をふりまいて、周囲に迷惑をかけることを指す。これを読んでいる読者諸賢は、果たして大丈夫だろうか? 体臭も個性と割り切ってもらえる文化であれば問題ないのだが、現在の日本では臭うことはあまり歓迎されない。  そうでなければ、これだけデオドラント製品が巷に流行るわけがない。汗を嫌い、臭いを嫌う。デオドラントというとひと昔前はスプレーが主流だったが、最近はより消臭効果の高いロールオンやクリームなどが流行っている。肌に成分が密着して、より臭いを抑えてくれるから。それほど今の私たちは体臭を抑えることに重きを置いている。 ~クサイと言われて傷つく男性~  しかし、周囲の人が気づいても、こと体臭に関しては指摘しにくい。だから家族の間でも「お父さんの洗濯物は別に洗う」ということになってしまうのかもしれない。体臭問題は非常にデリケートで、本人の気づきがなければいつまで経っても改善されない。  そしてやっかいなことに、男性は意外にも臭いの話題に関して非常にシャイであるということ。中年男性にカウンセリングをした経験から、他人や家族に「汚い」と言われるよりも「クサイ」といわれる方が断然、傷つくのだそうだ。これは一体、なぜだろうか? ~汚いは外的、クサイは内的~  語弊を承知でカテゴライズすると「汚い」というのは、汚れが外側について目に見える状態。一方「クサイ」というと体の内側からわき出るイメージがある。汚れは洗ったり、拭いたりしてわりと容易にリカバリーできるが、クサイ原因はその人自身から発せられ、表面的にコントロールできないもの。つまり、自分を否定されたような気分になるのだろう。  しかも、2000年に資生堂により「オヤジクサイ」の原因が明らかにされてしまった。それまでは単に比喩であった、中年特有の臭いが実際に存在するものとして、クローズアップされたのである。それが世に言う「加齢臭」。中年以降に多く分泌されるノネナールという物質があの饐えたような発酵臭の原因なのだ。これが発見されたことによって、オヤジ=クサイという公式がさらに広く世間に認知されてしまった。ノネナールは男性だけでなく、女性だって分泌している。ただ、ホルモンの関係で男性よりもその効力が弱くなるのだとか。だからやはりアレはオヤジ臭いのだ。 ~いかに加齢臭対策をすべきか?~  もちろん、原因が突き止められたことは素晴らしいこと。それにより対策も立てられるのだから。加齢臭予防で最も肝要なことは清潔にすることだ。きちんと洗うことで、ノネナールは軽減される。耳の後ろから多く分泌されるというから、念入りにその部分を洗うとよい。ちなみに私は朝、着替える前に耳の周辺をフェイスシートやコットンで軽く拭き取ることにしている。加齢臭対策に加えて、首筋を拭き取るとシャツの襟汚れも格段に減るからだ。  まあ、そんな小ネタはさておき、他にも男のニオイの原因はある。それは汗だ。汗は本来無臭だが、肌や衣服などについてバクテリアによって分解されると、悪臭の原因になる。そこに先述したノネナールや過剰な皮脂などが加われば、様々な種類の悪臭が交ざり合ってしまうというわけ。  従来型の男性の場合、そんなクサイという言葉にもめげなかった。否、まわりにそんなことを言わせなかった人が多かった。前回の「スキンケアを始めた理由/やめた理由〜男の動機は女次第」にも記したが、今の男性は厳しい現状にあり、そんなことは許されない。一度、クサイの烙印を押されたら、仕事にも支障をきたす。ビジネスマナーとして、一度自分の体臭と向き合ってみることをお勧めしたい。  幸い現在は体臭がひどい場合、汗腺を閉じるボトックス注射や手術という手段もある。普段の生活でしっかりとケアをし、信頼のおける人に率直な意見を聞いて体臭問題はクリアすべき。夏場だけではなく、厚着になる冬も意外と汗の臭いはこもりがち。消臭機能のある下着などをうまく使って、スメハラオヤジにならないよう、ご留意をば。【藤村 岳】 プロフィール DANBIKEN~男性美容研究所~を主宰する男性美容研究家。 男性の身だしなみの専門家としてテレビ・ラジオの出演や、雑誌・ウェブでの執筆活動を行う。「美しくなるよりも、嫌われない美容」が男性には必要とのモッ トーがあり、やりすぎない男性美容を提案している。 また、男性のためのパーソナルカウンセリングや講演・イベントなども開催。 最近は男性コスメ商品の企画開発、コンサルティングなども行っている。 (c)MODE PRESS 【関連情報】 第1回「なぜ、今、メンズ美容なのか?~肌がビジネスツールになる時」 第2回「スキンケアを始めた理由/やめた理由 男の動機は女次第」 <インフォメーション> 男性美容研究所 公式サイト<外部サイト>