【6月11日 AFP】蚊の遺伝子を組み換えて生まれてくる子孫の大半が雄になるようにし、最終的には個体群を全滅に導くとしたマラリア対策に関する研究論文が、10日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 英ロンドン大学インペリアルカレッジ(Imperial College London)などの生物学者チームが発表した論文によると、通常の蚊の個体群では50%の割合で雄が生まれるのに対し、この性別産み分け技術を用いると、生まれてくる世代の約95%が雄になるという。

 結果、雌の割合が極めて少なくなるため、この蚊の個体群は最終的に崩壊し、吸血性の雌によって運ばれるマラリア原虫が人間にもたらすリスクを抑えることができるという仕組みだ。

 研究を率いたロンドン大のアンドレア・クリサンティ(Andrea Crisanti)教授は「マラリアでは衰弱のみならず、死に至る場合も多いため、これに対抗する新たな手段を見つける必要がある」と述べる。

「われわれの革新的なアプローチは大きな前進だと考えている。まさしく世界で初めて、実験室内で雌の子孫の産出抑制に成功した。これはマラリアを撲滅するための新たな手段となる」

 国連(UN)の世界保健機関(World Health OrganizationWHO)によると、マラリアによる死者数は毎年60万人以上に上り、サハラ以南アフリカ地域の幼児が特にその犠牲となっているという。

 6年に及ぶ研究の成果であるこの技術は、マラリア原虫の媒介蚊として最も危険度が高いガンビアハマダラカ(学名:Anopheles gambiae)をターゲットにしている。

 研究チームは、雄の蚊の胚の遺伝子に一続きの酵素DNAを組み入れた。この遺伝子組み換え操作により、成虫で作られる精子のX染色体は正常に機能しなくなるという。

 結果として、子孫の性別を雌に決めるX染色体の数はほぼゼロになり、大半の精子は雄を作るY染色体を運ぶことになる。