【5月9日 AFP】生命の設計図であるDNAを構成し、アルファベットで示される「塩基」に、人工的に作り出した2種を追加することに、世界で初めて成功したとの研究論文が、7日に英科学誌ネイチャー(Nature)で発表された。

 研究チームは、自然界に存在しない人工塩基が組み込まれたまま、DNAを複製することのできるバクテリアを、遺伝子操作で作り出したという。

 研究チームによると、数億年にわたって存在し続けたDNAの塩基を人の介入で拡張できることを示すのがこの実験の目標。これは、革命的な新薬の開発やナノテクノロジーの技術革新への第一歩となるという。

■自然界の塩基対は2種のみ

 DNAは生命をつくり、維持するための遺伝情報を持った物質で、細胞内に2本の鎖として二重らせん構造で存在している。

 この2本の鎖は「ファスナー」のように結合されているが、この結合部分は塩基の対によってかみ合っている。

 アデニンはチミンと結合してA-T塩基対を作り、シトシンがグアニンと結合してC-G塩基対を作っている。

 今回の研究は、ここに第3の人工塩基対を組み込んだというもの。ただ、組み込まれた人工塩基対は、外部からの支えがなければ生存することができず、この支えがなくなるとDNAから排除されてしまったという。

 米スクリプス研究所(Scripps Research Institute)のフロイド・ロムスバーグ(Floyd Romesberg)氏は「地球上の多様な生命はたった2つの塩基対、A-TとC-GからなるDNAでコードされている」と説明している。「われわれが作成したのは、この2対に加えて第3の人工の塩基対が安定して組み込まれた生物だ」