【2月7日 AFP】セクハラ告発運動による影響や、コレクションをニューヨーク以外で発表するデザイナーが相次ぐなど、暗雲がたち込めるなか18/19年秋冬コレクションがニューヨークでスタートした。

 このファッションの祭典は米国の金融の中心地であるニューヨークの街に23万人ものを呼び込み、年間およそ9億ドル(約982億6200万円)の経済効果をもたらす。

米・ニューヨーク市内で開催された「アレキサンダー・ワン」17年春夏コレクションの様子(2016年9月10日撮影)。(c)AFP/Getty Images/ANGELA WEISS

 ニューヨークファッションウィークは現在、2月と9月の年2回開催されている。しかしソーシャルメディア上ではインフルエンサーたちの影響力がファッションエディターやバイヤーらを上回りつつある中、この発表の場を離れるブランドが続出した。ニューヨークに変わり発表の場をヨーロッパに移したり、ランウェイ形式で新作発表を行わないブランドもある。

 3日間のメンズコレクション後、8日から開幕するファッションウィークで期待されるトレンドを予想した。

■#MeToo

 米国全土とファッション業界にショックを与えたセクハラ騒動を受け、米国ファッション協議会(Council of Fashion Designers of AmericaCFDA)は不正行為を弾圧するために新しいガイドラインを発表した。

米・ニューヨーク市内で開催された「ラルフ・ローレン」17年春夏コレクションのショー会場でランウェイを見つめるファッションデザイナーのダナ・キャランとダイアン・フォン・ファステンバーグ(2016年9月12日撮影)。(c)AFP/Getty Images/ANGELA WEISS

「我々は安全でない環境を一切容認しない。この業界の仕事場で虐待にあった場合は報告するよう、強く奨励する」と新ガイドラインを発表する文書の中で米国ファッション協議会の会長であるダイアン・フォン・ファステンバーグ(Diane von Furstenberg)は述べた。同ガイドラインでは摂食障害に対する認識や、より一層の多様性を支持することも記されている。

 大手出版社「コンデナスト(Conde Nast)」は、傘下にあるファッション誌「ヴォーグ(Vogue)」や「ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)」で、不正行為疑惑のある有名写真家のテリー・リチャードソン(Terry Richardson)、マリオ・テスティーノ(Mario Testino)、ブルース・ウェーバー(Bruce Weber)らを起用しないこともすでに発表している。

米・ニューヨーク市内で開催された「ロダルテ」17年春夏コレクションの様子(2016年9月13日撮影)。(c)AFP/TIMOTHY A. CLARY

「コンデナスト」社は、ガイドラインに撮影セットへのアルコールの持ち込みや、保護者の同伴がない18歳未満のモデルの起用を禁じる他、ヌードや「性的な暗示を含む」ポーズが含まれる場合は、撮影前に説明と同意を得る必要についても記述した。

 しかしモデル・アライアンス(Model Alliance)は、「意味のある、永久的な変化」を求めており、教育のない「自主基準」やしっかりとした苦情処理制度がない、個人レベルの実施では意味がないと主張している。

米・ビバリーヒルズで開催されたヴァニティフェア誌のグレイドン・カーター主催のパーティーに出席したハーヴェイ・ワインスタインとジョージナ・チャップマン(写真右、2017年2月26日撮影)。(c)AFP/Getty Images/ PASCAL LE SEGRETAIN

 米映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタイン(Harvey Weinstein)と離婚目前とされるデザイナーのジョージナ・チャップマン(Georgina Chapman)が手掛ける「マルケーザ(Marchesa)」は、14日にニューヨークで行われる予定だったショーをキャンセル。ワインスタインの、セクシュアルハラスメントからレイプといった次々発覚した性的虐待疑惑を受け、ショーを「今までとは違う形」で発表する予定だ。

 また、セクハラ告発運動から名を取った、#MeTooファッションショーがセクハラに対する啓発としてスケジュールに追加され、9日に開催されることになった。

「物事を変えるには一致団結し、『それは良くないこと、これ以上容認しない』と言うしかない」と主催者であるミリアム・チャレック(Myriam Chalek)は米ニュースサイト「デイリー・ビースト(The Daily Beast)」に語った。

■混乱の時期

 モデルたちが私服として愛用するアーバン・シックなスタイルを提案し、ニューヨークを代表するデザイナーの一人、アレキサンダー・ワン(Alexander Wang)は今回一大決心をした。ショーを2月と9月に行う従来の枠からは外れ、6月と12月にコレクションを発表すると決断したのだ。

米・ニューヨーク市内で発表された「アルチュザラ」16/17年秋冬コレクションの様子(2015年2月14日撮影)。(c)AFP/Jewel SAMAD

 ワンの決断は、「プロエンザ スクーラー(Proenza Schouler)」と「ロダルテ(RODARTE)」がパリのオートクチュール・コレクションへと、「アルチュザラ(Altuzarra)」がパリコレクションへと発表の場を移したことに続いた。

「効果のないことをやる理由がない」と話すのは「アレクサンダー・ワン」の最高戦略責任者、ステファニー・ホートン(Stephanie Horton)。「消費者が変化したのであればビジネスモデルも変えなければいけない」と最近ニューヨークで開催された業界イベントで語った。

 米国ファッション協議会(CFDA)のスティーブン・コルブ(Steven Kolb)プレジデント兼CEOは、他のデザイナーもこの流れに乗る可能性があると予想。「しばらくは混乱が続くかもしれない。しかし混乱もいつかは落ち着く」と同じイベントで語った。

米・ニューヨーク市内で開催された「ヴィクトリア・ベッカム」17年春夏コレクションのショーフィナーレに登場したデザイナーのヴィクトリア・ベッカム(2016年9月11日撮影)。(c)AFP/TREVOR COLLENS

■大脱走

 トミー・ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)は「シー・ナウ・バイ・ナウ(see now, buy now)」型のファッションショーを次はミラノで開催。リアーナ(Rihanna)が「プーマ(Puma)」とコラボレーションした「フェンティ プーマ バイ リアーナ(FENTY PUMA by Rihanna)」は休息期間を設け、ラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)は自身のアーバンスポーツウェアブランド「イージー(Yeezy)」の最新コレクションをインスタグラム(Instagram)で発表。モデルは妻であるキム・カーダシアン(Kim Kardashian)が務めた。

 ヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)が手掛けるブランドは、10周年を来年ロンドンで祝う前に、ニューヨークでの最後のコレクションを発表する。「デルポソ(Delpozo)」は既にロンドン、「トーメ(TOME)」はパリへと発表の場を移している。(c)AFP/ Jennie MATTHEW