■収入源

 ワークショップで働く女性にとって、刺しゅう仕事は大切な収入源だ。

 アンカスーリさんは「このキャンプではみんなが貧困で苦しんでいます。一つ一つの値段は15~20ディナール(約2300~3000円)と安くつけても、この仕事は私たちの生活の助けになっています」と明かす。

 一つの商品に刺しゅうを施すには、最低でも1週間はかかる。手が痛くもなるが、ワークショップで他の女性たちと一緒に過ごすことを楽しんでいる。

 ヴェントゥーラさんは女性たちの「ユニークな才能」が「世界中で高く評価されている」と話す。

 国連(UN)に登録されているヨルダン国内のパレスチナ人難民は200万人超だが、ヨルダン人口660万人の半数がパレスチナにルーツを持つ。

ヨルダンのジャラシュ・キャンプにあるワークショップで刺しゅうを施すパレスチナ人女性。この難民キャンプは、ガザ地区から避難した1万1000人以上のパレスチナ人のために創設された(2017年11月5日撮影)。(c)AFP/KHALIL MAZRAAWI

 アンカスーリさんをはじめ多くの女性たちは、刺しゅうを母親や祖母に教わった。パレスチナの各地域にそれぞれのモチーフやパターンがある。アラダさんは自分たちの手工芸品によって、パレスチナの歴史と文化を新しい人たちに見せることができるのと同時に「私たちの信念もアピールできる」と誇らしげに語る。ワークショップの壁に飾られている旗と地図は、女性たちに生まれた地とのつながり、そして若者たちには先祖とのつながりを思い出させる。

 アラダさんは「ここにいる女性一人一人に物語がある」と話す。「夫の多くが働いていない中、この仕事は子供たちを学校に通わせたり、家具を新調したり、より良い生活を送ることを可能にしてくれる」

 イスラムのディテールを施した青い財布を編んでいたヒバ・フダリ(Hiba al-Hudari)さん(37)は、ワークショップは「2番目の家」だと言う。6歳の子供がいる彼女は、月に約150ディナール(約2万3000円)を稼ぐ。「そのお金で、機械工の夫と一緒に家計を支えている」(c)AFP/ Kamal Taha