【9月29日 AFP】台北(Taipei)の静かな作業場で、何十年も伝統的なチャイナドレスを作り続けている師匠の監視のもと、3人の若い女性が注意深く、裁縫とアイロンをかける作業にいそしんでいた。

 74歳のリン・チンテ(Lin Chin-te)は、台湾の現役職人の1人。かつては多くの女性の日常着の一部であった、体にぴったりとした高襟の服を手作りすることを専門とする。彼の作業場には、精巧な刺繍を施したシルクの赤いロングドレスや、より着やすい素材でできた短い丈のものなど、あらゆるチャイナドレスがつり下げられている。出来あいのものよりずっと高価で非実用的と思われているテイラーメイドのチャイナドレスは、今やほとんどの場合、結婚式や特別なイベントで着用されるだけだ。

 リンは、ドレスメーカーたちが彼の技術を学ばず、徒弟に彼のノウハウが伝授されていかないことを心配している。37歳のホン・チュツ(Hung Chu-tsu)は、3人いるリンの弟子のうちの1人。「師匠はとても忍耐強い」と、自作だという膝丈の青い花柄のチャイナドレスをまとった彼女は言う。「我々は基礎から学び始め、一針ずつ学んでいった」

 チャイナドレスは美しいと語るホンは、子供を持った後、看護師としてのキャリアを捨ててドレスメーカーになる勉強を始めた。彼女は将来、自分の店を持ち、現代の生活に適したハンドメイドのチャイナドレスを販売することを計画している。しばしば微笑みながら、サスペンダーでつりさげたズボン姿のリンは、指抜きを中指にはめて、60年間の彼の経験が無駄にならないようにしたいと語った。「私は彼らが将来自立できるように、できるだけ多くを弟子に教えたい」