■移り変わるファッションテイスト

 民主主義を象徴するアウン・サン・スー・チーは昨年、ミャンマーで数十年ぶりの文民政権における事実上のリーダーとなった。そして今も、彼女が公の場でまとうエレガントな伝統服は、広く称賛されている。だが、今も伝統衣装、特に男女共に着用するロンジ—が好まれる一方で、ファッションは変化を見せ始めている。ヤンゴン市内では成長しつつある中流階級をターゲットにしたショッピングモールが増え続ける中、周辺部の工場は若く安い労働力にひきつけられた海外ブランドの服を大量生産している。

 この産業の裏側を、まさに目の当たりにしたブティックデザイナーのピョン・テッ・テッ・チョー。10代の頃、ヤンゴン郊外にある縫製工場で何か月も懸命に働いたが、報酬は今の金額にして週に1.46ドル(約170円)だったという。

 この経験を通じて彼女は、自分のブティックをオープンして若い女性たちに服作りを教え、彼女らが自分と同じような境遇で苦しまないようにしようと決心した。

「さまざまなことが見えるようになった。たった10分でランチを済ませたり、トイレに行きたいときに行けなかったりしたのは、生産ラインが混乱するからだった」と彼女は言う。「ファストファッションや非道徳的なファッションが続けば、苦しむのは私たちだ」