【12月28日 AFP】オランダ・ハーグ(Hague)のハーグ市立美術館(Gemeentemuseum)で2017年3月まで、回顧展「To Audrey with Love(オードリーへ、愛を込めて)」が開催されている。会場には、ファッションデザイナー、ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy、89)が、彼の友人でありミューズだった女優オードリー・ヘプバーン(Audrey Hepburn)のために手掛けた数々の衣装が展示されている。

 ジバンシィとヘプバーンが出会ったのは、1953年だった。回顧展の記者会見に出席したジバンシィは、「オードリーは、映画『麗しのサブリナ(Sabrina)』のためのドレス制作を依頼しに私のもとへやってきた。しかし、私は彼女のことを知らなかった。(女優の)キャサリン・ヘプバーン(Katharine Hepburn)が来ると思っていた」と振り返る。

 その際のヘプバーンは「とても傷つきやすそうで、優雅で、若々しく、華やか」で、まるで「現代の少女のような」Tシャツとコットンパンツとフラット姿に、バレリーナシューズと麦わら帽子を合わせていたとジバンシィ。「とても映画の主要な衣装を作れるような状態ではなかったので、彼女に『無理です、お嬢さん。あなたには着せられません』と断ったのです」

 しかしヘプバーンは話を聞かず、ジバンシィをディナーに招待。料理を食べ終わるまでの間に、ジバンシィはすっかり彼女の魅力のとりこになったという。「彼女に説得され、それを引き受けたことは、本当に幸運だったと思う」とジバンシィ。

 そこから始まった2人のクリエイティブな友情は、ヘプバーンが1993年にがんで亡くなるまで続いた。

 ジバンシィは1954年に公開された『麗しのサブリナ』の劇中に登場する花モチーフの刺しゅう入りドレスや、同年にヘプバーンが『ローマの休日(Roman Holiday)』で米アカデミー賞(Academy Awards)最優秀主演女優賞に輝いた際に着用したドレスを手掛けた。その後も、『ティファニーで朝食を(Breakfast at Tiffany's)』(1961年)や『シャレード(Charade)』(1963年)など、数々の彼女の代表作の衣装をはじめ、プライベート用にもデザインを続けた。

 ヘプバーンは「自分らしさを感じされるのは、ジバンシィの服を着ているときだけ。彼は単なるデザイナーではなく、個性の創造者でもある」との言葉を残した。

 回顧展には、ジバンシィが自ら厳選した約100着の服に加え、ジュエリーや小物、写真や映画のスチールなども展示されている。(c)AFP/ Sophie MIGNON