【11月16日 AFP】昨今のファッションブランド大手の広告塔に、年齢を重ねた高齢女性たちが起用されるケースが目立っている──。映画『007』シリーズ最新作では、50歳超の女優がボンドガールに選ばれるなど、にわかに「ブーム」の様相を呈してはいるが、これは社会の意識の変革を意味するのだろうか、それとも単なるマーケティング戦略なのだろうか?

「セリーヌ(Celine)」の15春夏コレクションでは、銀髪をクールなボブにまとめ、全身黒の衣装をまとい、大きなサングラスをかけた米作家のジョーン・ディディオン(Joan Didion)さんが抜擢された。ディディオンさんは80歳だ。

「サンローラン(Saint Laurent)」の「ミュージック・プロジェクト」では、ギターを抱えて大きな帽子をかぶったジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)さん(72)が大きくフィーチャーされ、「ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)」のキャンペーンでは、かしましいイタリアのおばあちゃんたちが起用された。

 そして、「ヴェルサーチ(Versace)」や「ジバンシィ(Givenchy)」が、米歌手マドンナ(Madonna)さん(57)や米女優ジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)さん(48)をそれぞれモデルとして採用しているほか、イタリアの女優モニカ・ベルッチ(Monica Bellucci)さん(51)も、映画『007』シリーズの最新作で、最年長のボンドガールとしてスクリーンに登場している。

 社会の高齢化が進み、世界の一部地域で高齢者の購買力がどんどん高まっていることを鑑みれば、このような広告があっても不思議ではない。

 昨今の流れについて、市場調査会社ユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)のアナリスト、マグダレナ・コンデジ(Magdalena Kondej)氏は、シニアマーケットは「中長期的視点に立てば最も力のある消費者層の一つ」と分析する。

 コンデジ氏は、60代以上向けのフェースクリームの広告モデルに米女優ジェーン・フォンダ(Jane Fonda)さん(77)と契約を結んだ美容大手ロレアル(L'Oreal)を例に挙げ、「高齢消費者層をターゲットにしたマーケティングは成功しており、年配の著名人が広告に起用されるケースが増えている」と説明する。

 さらに同氏は、「このアプローチはアパレルブランドにとってもベストな選択肢とみられており、また年齢を重ねても美しくありたいと考える女性たちアピールする広告モデルが不足する心配はない」と分析している。

 しかしその一方で、この高齢女性ブームが真の意識変革を示すものなのか、あるいは「若さへの欲望」を決して捨てることのないファッション業界が新たに打ち出したショック戦術にすぎないのか、懐疑的な目を向ける評論家がいるのも事実だ。