【5月22日 AFP】華やかで楽しげなパーティーといったイメージのあるカンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)だが、半世紀前に定められたレッドカーペットでのドレスコードでは、逆に「慎重さ」さえ求められているようだ。このドレスコードは半世紀前に定められたまま一度も変更されたことがないという。

 南仏カンヌで開催中の第68回カンヌ国際映画祭では、ヒール部分が低いフラットシューズを履いていたとの理由で、女性らが上映会への入場を拒否されたことが明らかになり、論争が巻き起こっている。この騒動を静めたい主催者側は、タキシードとイブニングドレスの着用は義務付られているが、ハイヒールは必須ではないと説明。カンヌ国際映画祭でディレクターを務めるティエリー・フレモー(Thierry Fremaux)氏は19日、靴については規則はないと明言した。

 劇場へと続く24段の階段まできっちりと敷き詰められた赤いカーペットは、華やかなドレスやおしゃれなスーツが最大限映えるよう、作品の上映ごとに新しいものと交換されるという。

 ドレスコードは、女性は華やかなイブニングドレス、男性はタキシードか最低でも準礼装となっており、第1回映画祭が開催された1946年から一貫して変わっていない。カメラマンでさえ、レッドカーペットの敷かれた階段に近づくには、相応の格好をする必要がある。

 ただ、一部のVIPに限っては例外もある。今年の審査員団を率いるジョエル・コーエン(Joel Coen)監督とイーサン・コーエン(Ethan Coen)監督の兄弟は、オープニング・セレモニーにネクタイ姿で登場した。また、女性に至っては、グラマラスと判断される限り多少奇抜な服装も認められている。

 入場拒否の騒動を受けて著名人からもコメントが寄せられている。2011年に他界した英歌手エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)さんのドキュメンタリー作品を出品したアシフ・カパディア(Asif Kapadia)監督は、妻もフラットシューズを履いていて入場を拒否されたことがあるが、最終的には入場を許可されたことがあると明らかにした。また、映画製作者のバレリア・リヒター(Valeria Richter)氏も、係員から「そのような靴では入れません」と指摘されたことがあると述べている。リヒター氏は左足の一部を切除しているためハイヒールの着用が困難なのだという。

 今回の騒動について主催者のフレモー氏は、係員が少し真面目過ぎたのかもしれないと述べ、関係者に謝罪した。また「上映会でのドレスコードはずっと変わっていない」との声明を発表し、「女性や男性の靴のヒールの高さについては明確な言及はない」と説明している。(c)AFP/Franck IOVENE