【9月18日 MODE PRESS】去年(2013年)6月に写真家のパーカー・フィッツジェラルド(Parker Fitzgerald)と上海で撮影をする仕事があった。パーカーは雑誌『キンフォーク(KINFOLK)』を代表する写真家で、編集部があるアメリカ西海岸オレゴン州の都市ポートランドの住人だ。彼と上海での撮影前後にあれこれ話をするうちに、ポートランドという街に俄然興味を持つようになり、彼が訪れるなら7〜8月がベストという翌年2014年8月のポートランド行きのフライトを上海から戻って即座に予約。そしてこの8月上旬にようやく初のポートランド訪問を実現出来た。

 ところがこの1年で、日本のメディアでポートランドを巡る状況は一変した。『エル・ジャポン(ELLE)』14年2月号がポートランド別冊を付け、『ポパイ(POPEYE)』14年7月号がポートランドの特集「ポートランドに行ってみないか?」を世に出し、『TRUE PORTLAND』という日本語のガイドブックまで出版され、ちょっとしたポートランド・ブームの感すらある。

 なぜ、多くのメディアがポートランドに注目しているのか。人口は60万という中規模で、大企業といえば「ナイキ(NIKE)」の本社があるくらいの街だ。しかし都市的な文化と保護された大自然を周辺に併せ持って「全米で最も住みたい街ランキング」で1位を獲得し、市内にはスタンプタウン・コーヒー(Stumptown Coffee)をはじめとするサードウェーヴのロースターが約60軒。またクラフトビール・ブームの発火点でもあり、市内にビールの蒸留所が200軒も誕生している。さらには近郊に多くのワイナリーを抱え、ビオワイン・ブームでも牽引的な役割を果たすオーガニック文化のメッカでもある。他にもホテル業界の常識を変えたトレンドスポット、エースホテルの二号店にしてエースを代表するホテルもあり、今では内外から多くの人々が移住し、そして観光に訪れる街になった。

 このポートランドという中堅都市に、これほどの活力があり、多くの若者が集まる理由は何か。決してショッピングタウンではなく、ファッションが盛んでもない街がなぜ多くのメディアを魅了するのか、街のキイパーソンたちに話を聞いてみた。