【9月12日 MODE PRESS】文化ファッション大学院大学(BFGU)と「H&M」による共同プロジェクト「ストリート・アウトドア・プロジェクト」の最終講義・審査会が、都内で開催された。

 「H&Mデザインアワード(H&M Design Award)」など若手人材の発掘にも力を入れる「H&M」が、ファッションスクールと共同で実施している同プロジェクトは、生徒たちが出題された課題に沿った作品を制作・発表する。日本初の開催となった今回、生徒たちには「20~40歳の都会的な男性に向けた機能的なアウトドア・ウエアの開発」という課題が与えられた。

 最終講義では、ファイナリストに選出された10名が前回の講義でのフィードバックをもとに自身の作品を手直しし、「H&M」デザインチームほか、『メンズノンノ』の岩佐きぬ子(Kinuko Iwasa)編集長、BFGUの小杉早苗(Sanae Kosugi)研究科長など7名の審査員の前で完成作品を発表した。

■グランプリ作品は「侍」がインスピレーション

 グランプリに選ばれたのは、「侍」からインスピレーションを得た作品を制作した椎尾絵里子(デザイナー)さんとチョン・ジャウォン(パタンナー)さんのペア。海外ブランドにもよくモチーフとして用いられる侍だが、日常生活で着こなすには難しいデザインのため、ストリートで着られる侍スタイルにこだわった。レイヤードなど現代の服との共通点を生かしつつ、裃(かみしも)、甲冑など当時の服の特徴をデザインに取り入れた。テキスタイルも着物などに使用されていた伝統的な模様をカモフラージュ柄に紛れこませ、オリジナルのものを制作した。

 また、シャツの袖ボタンが邪魔で留めにくいと感じた自身の経験から、内側と袖をニット素材にして動きやすく、ロールアップしやすいように工夫。さらに前回のフィードバックを受けてポケットの数を減らしたり、ジャケットのままでも自転車に乗れるなど前傾姿勢が取りやすいよう背中にアクションプリーツを入れ、より機能的に進化させた。

■デザイン性と機能性の両立

 審査員でプロジェクト・リーダーを務めた「H&M」のシニアデザイナー、ペテル・クルーセル氏は選考について「デザインと機能性の両方を兼ね備えているかという点を平等に審査しました。グランプリの作品はコンセプトがシンプルで、首尾一貫していたこと、デザイン性と機能性のバランスもとても良く、見た目はとてもモダンで、非常に力強い作品になっていたことから選出しました」とコメントした。

 椎尾さんは「今回のデザインは、日常生活で自分が服を着ていてもっとこうだったら良いのにと思った部分を形にしてデザインに落とし込み、パタンナーのパートナーと一緒に作り上げたので、そこを評価してもらえてとても嬉しく思います。デザインするときは見た目で楽しめるものと、着心地の良さのバランスを考えています」とコメント。

 また優勝者に与えられる「H&M」本社のデザインチームでのインターンシップについては、「ファストファッションは反対する人も多いけれど、たくさんの人が着られる服を提供するという点はやはり魅力的だと思います。企画から販売までのスパンもとても短くスピーディーなので、その辺りを実際に自分の目で見て学べることがとても楽しみです」と語った。(c)MODE PRESS