【5月14日 senken h】東西の商業施設オープン&リニューアルで、人の動きも街も様変わりしそうな今春。人気ブランドの店舗開発担当者に、それぞれの動きや新店の見どころ、新規オープンによる変化についてインタビュー。各社独自の挑戦とプロ目線でのオープンラッシュ模様、必読だ。


■ユナイテッドアローズ
「感度を高め提案力を強化し新しい顧客を発掘」
(ユナイテッドアローズ UA本部 WOMENS商品部 部長 太田勝哉さん)
「4月に『ユナイテッドアローズ 六本木 ウィメンズストア』をオープンしました。六本木の上品・上質な本物志向の大人の方へ向け、新しい女性の生活を提案するべく、オリジナルの中でもハイレンジな『ユナイテッドアローズ ゴールドレーベル』を中心にしたウエアや、エレガントでハイランクなパーティーウエアとアクセサリー。モード×スポーツのウエア、丁寧に作られたスープやコンフィチュールといったストックフードなど品揃えを充実。美と健康をテーマにした『衣+食』で居心地の良い空間になっています。
 商品や施設を選別する基準はますます高まってきていますし、過去に比べて高感度な層も増えていると感じます。たくさんのお店があるからこそ、地域特性やそれぞれの商業施設が持つ特色を生かした、店ごとの多種多彩な個性が求められています。六本木店のように自分たちの感度を高め、提案力を強化することで、まだまだ間口を広げることが可能だと捉えています」


■ビームス
「ビームスの世界観を体感できる地域に根ざした店作りを」
(ビームス 業態開発部 課長 星野千秋さん)
「今春は、昨年秋に本格始動したファミリー向けブランド『ビーミング ライフストア by ビームス』が、首都圏に加え関西に初出店。また初の試みとなる、大人向けのメンズ業態『ビームス EX』とウィメンズ業態『デミルクス ビームス』を1つに編集したショップ『ビームス EX デミルクス ビームス』もオープンしました。商品や接客サービスはもちろん、内装も1店舗ずつ地域顧客特性を考慮した店作りをしていますので、ビームスの世界観やこだわりを存分に体感して頂けると思います。
 今春注目の大阪では、梅田や阿倍野での大型施設開業で消費者の選択肢は広がりますが、立地やコンテンツにより優劣が顕著になってくる事が予想されます。商業施設、出店するブランド双方の一層の努力が今後求められると思います」


■シップス
「シップスの新スタイル発信と新たなファン創造へ」
(シップス・営業本部 店舗管理部兼営業管理部 部長 具嶋純也さん)
「新たな商業施設の誕生により、メインターゲットに対する『SHIPS新スタイル』の提案と活性化、そして『新たなSHIPSファン』の創造といった可能性が広がると思います。
 この春は、新宿ルミネに『SHIPS Decent Loom』(シップス ディセントルーム)と『SHIPSグランフロント大阪店』を出店。シップス ディセントルームは、シップスが提案する大人の女性のための新コンセプトショップです。常にトレンドを意識しながらも、シップスらしい『本物』や『ベーシック』を大切にしたトラディショナルなスタイルから、魅力的な女性像をイメージしたワードローブと生活雑貨を選りすぐり、洗練されたライフスタイルを発信。今までのシップスとはひと味違った雰囲気を楽しんで頂きたいです。
 グランフロント大阪店では、幅広い世代、ニーズに対応できるシップスらしい安心感と刺激を提供する関西エリアのフラッグシップショップとして展開していきます。『SHIPSの全て』が表現されたグレード感あふれる空間を演出します」

■アバハウス
「ブランドの名前や人気ではなく、自分の価値観が選ぶ基準に」
(アバハウスインターナショナル 執行役員 店舗開発部長 関川 聡さん)
「アバハウスでは、『MADE IN JAPAN、MADE IN USA』にこだわり、品質とセンス、手頃な価格を持った、ライフスタイル新業態『マイセルフ アバハウス』がデビューしました。首都圏では横浜ららぽーと、池袋ルミネ、マークイズみなとみらい(6月21日)、関西では天王寺ミオとグランフロント大阪に出店。人口が減り老齢化が進むなか、時代の変化や多様化を捉え、差別化により消費者の心を掴む施設とそうでない施設の差がはっきりしてきますので、既存施設のコンセプトの見直しが増えてくるのではないでしょうか。
 しゃれた雑貨店やライフスタイル提案型ストアが増えているのは今の時代性ですが、ブランドの人気やお店の名前で服を選ぶ時代は終わり、自分自身や自分の感性を大切にして自分の意思で選ぶことが、これからの消費のあり方。自分の価値観が消費の選択となる傾向がますます強くなると思います」


□ベイクルーズ
「顧客の満足を1番に考えた特性ある店舗と商品で差別化」
(ベイクルーズ 取締役 営業統括 瀧越 潤さん)
「商業施設が増えることは競争が激しくなることでもありますので、さらにお客様の視点に立った戦略で、それぞれのブランドでファンの満足最大化を目指したいと考えています。
 その思いで、3月には辺見えみりさんをコンセプターとして迎えた新業態・代官山の『Plage』(プラージュ)、天王寺ミオの『ジャーナル スタンダード レリューム』『j.s.パンケーキ カフェ』、岡山一番街に『417 by エディフィス』『イエナ スローブ』、六本木ヒルズに『ドゥーズィエム クラス』(移転)、町田モディに『j.s.パンケーキ カフェ』。4月は東京ミッドタウン『フィガロ パリ』とグランフロント大阪に『ドゥーズィエム クラス』『エディット フォー ルル』などをオープン。それぞれのお店は、ブランドイメージを表現している店舗空間とスタイリング提案、接客、ブランド特性を生かした商品のバランスになっています。各ブランドの魅力の源泉を体験して頂ける空間を提案しています」


■アッシュ・ペー・フランス
「独自のクリエーションとセンスで、各店の『らしさ』を余す事なく表現」
(アッシュ・ペー・フランス 開発室 杉本秀樹さん)
「青参道の路面店『メゾン ドゥ コンセント』、『ゴールディ アッシュ・ペー・フランス 横浜店』の移転、『ミカン アッシュ・ペー・フランス エクスクルーシヴ』から業態変更したラフォーレ原宿の『カンナビス』が今春のオープン。分析によるお客様の動向変化に対応した移転、リニューアルの実施となっています。
それぞれのショップの特長と『らしさ』が分かりやすく展開されていると思いますので、サービスだけでもなく、モノの良さだけでもない。ヒト、モノ、仕掛け、空間など、『全体バランス』を見て頂きたいです。それがすべて自前のクリエーションとセンスによるものであり、それが弊社の『売り』でもあると自負しています。
 商業施設の開業などで瞬間的な流動はあると思われますが、永続的な変化をもたらすとは考えづらい。施設のエンターテインメント性や専門性が問われる時代だと思いますので、施設ができてからの弛まない変化を継続できる体力と、知恵の有無が生き残りを左右すると思います」


■アーバンリサーチ
「付加価値あるコトとモノを提供し、コミュニティー作りを拡大」
(アーバンリサーチ 第一営業部 マネージャー 高橋裕之さん)
「春の動きでさらに各ショップの差別化が図られると考えます。お客様のニーズを読み取る店舗開発を進めますが、一方的に利益を追求するのではなく、一つひとつのショッピングセンターがコミュニティーの集合体を成していくような、人が集まるコミュニティー作りを拡大したいと思っています。これまで以上に付加価値をともなった『コト、モノ』を提供するべく、『ワーク ノット ワーク』『フリーマンズ スポーティング クラブ』に代表されるコミュニティーマーケット型店舗を出店。また一方でポップアップショップや駅ナカショップなど利便性マーケット型店舗の出店がありました。
 お客様にはアーバンリサーチが発信する『カルチャー』に注目して頂きたいです。コンテンツの充実もありますが、表面的なコトだけでなくブランドや店舗から発信する、文化的要素を含む『コト、モノ』に興味を持って頂ければと思います」


■ナノ・ユニバース
「良さをシンプルに発信することで情報を確実に伝達」
(ナノ・ユニバース 店舗開発 姉川輝天さん)
「ここ数年、雑貨の売上構成比が高くなり、アーバンドック ららぽーと豊洲に加え神戸ハーバーランドにオープンする『ナノ・ユニバース ザ ファースト フロアー』業態とともに、ライフスタイル雑貨にも力を入れております。その他、札幌ステラプレイス、ルミネ立川店、グランフロント大阪に『ナノ・ユニバース』を、横浜ベイサイドに『ナノ・ユニバース ベースメント』を展開。落ち着きのある店装空間に、クオリティーと価格のバランスがとれたハウスブランド商品、世界から集められたインポート品を見て頂きたいです。
 商業施設の増加については、小売側が大変な事に…。お店の数だけ情報が増え、良く言えばお客様の選択肢が増えますが、見方を変えると要らない情報までが入ってくる。物の売り方が変わってきており、また勝ち負けがハッキリする市場になっていますので、いかにシンプルにブランドの良さを伝え、自分たちの情報をキャッチしてもらえるかにかかってくる事になると思います。


■ハッカ
「ショップのオリジナリティーと衣・食・住トータルの展開に注目」
(ファッション須賀 取締役 事業本部 部長 中澤 義さん)
「グランフロント大阪では弊社のみとなるキッズオンリーショップ『リボンハッカキッズ』を梅田初オープン予定。キッズセレクトショップの先駆け的存在として、ここへきて好調に浸透してきていますので、東は六本木ヒルズ店、西はこのグランフロント店をフラッグシップショップとして展開します。
 レディスでは、ブランドや商品の価値を理解してくださるお客様が増えてきた『ケイ ハヤマ プリュス』を伊勢丹浦和店と髙島屋横浜店に。最近の『ぽちゃかわ』ブームに乗って、予想以上に売り上げが推移している『スーパーハッカ フィーユ』を伊勢丹新宿店とJR大阪三越伊勢丹店にオープン。また、4月末にオリジナルバスルームシリーズの新ライン『シャボン スーパーハッカ』も展開します。
 市場としては選択肢が増え活性化されていくと思われますが、オーバーストアの兆候があり、良い店悪い店の差がはっきりし、淘汰されていく傾向があるのではと考えます。オリジナル商品やハッカのフィルターを通して国内外からセレクトした商品で構成された、独自の店を見て頂きたい。また、衣・食・住トータルで提案する店舗展開にも今後注目して頂きたいです」


■アダム エ ロペ
「人を楽しませ、驚かせる新たなトライで可能性を開く」
(ジュン アダム エ ロペ 課長 雨宮丈洋さん)
「『アダム エ ロペ ル マガザン』を東急百貨店渋谷駅・東横店に、『アッサンブラージュ アダム エ ロぺ』を札幌ステラプレイスにオープンしました。『アダム エ ロペ ル マガザン』は、パリのキオスクをイメージした5 坪(約16.5㎡)程度のユニット式店舗に、世界各国から集められた日常生活を豊かにするさまざまな雑貨と、店舗特性に合わせたファッションアイテムを展開し、海外のスーベニールショップのような空間を演出。大切な人、友人、家族と会う前に立ち寄ることで、まわりの人や自分に対して小さな幸福を届けられるショップにしたいと考えています。
 遊び心を忘れない大人の女性のためのセレクトショップ『アッサンブラージュ アダム エ ロぺ』では、カジュアルからラグジュアリーまで、厳選された世界各国の上質なアイテムとオリジナルアイテムをラインアップ。洗練された女性に向けて、もっと自由に、もっと自分らしくいられるスタイルを提案しています。
 活性化とともにお客様の期待感も高まりますが、一通り開拓された後の伸びしろは大きくはないと考えています。しかし、施策や仕掛けなど新しいトライでお客様を楽しませ、驚かせることによって、いろいろな意味で可能性が広がると思います」


■エディション
「オリジナリティーと感性をすべてに打ち出すことが必須」
(トゥモローランド エディション ショップディレクター 下村 恒さん)
「このたび『グランフロント大阪』に出店しますが、オープンのキーワードには『NEW』という言葉を選びました。新しい商品構成、新しいショップデザインと空間、新しいショップ運営で、お客様に今までにないアプローチをしていきます。
 これからは、MDやショップ空間、スタッフ、商品価格帯など、より洗練されたショップ・ブランドが生き残る環境になると思います。オリジナリティーや自分たちの感性をすべてにおいて打ち出す必要性があるのと同時に、それができてこそ、お客様の理解度が増し、可能性が広がると感じています。
 また、人口の絶対数は減っていきますが、その反面スマートフォンの普及やSNSの定着化により、ショップ情報の発信、そしてお客様への伝達スピードは速くなっています。上手な情報発信ができれば、お客様にとってプライオリティーの高いショップになり得ると考えています」

■ダブルスタンダードクロージング
「感動を連鎖させる良いモノ作りと良い販売力で選ばれる店、選ばれる人に」
(フィルム 代表取締役社長兼デザイナー 滝野雅久さん)
「この春は丸の内の『KITTE』(キッテ)に『ソブ ダブルスタンダードクロージング』、東急百貨店東横店に『ダブルスタンダードクロージング』をオープン。また、イタリアのシューズブランド『アンドレア・ヴェントゥーラ』を、秋から本格的に独占販売します。モノを見る目を持った30~40代が増えていて、そんな人たちに提案できる喜びを体感できるディベロッパーへの出店を考えています。
 近年のファッション業界はモノからコトと良く言いますが、コトの前にモノ。つまり服作りで心を動かさなければお客様がついてきません。本当に良い服作り、感動してもらえる洋服やコーディネートを作って、まずは一番のファンである店長を驚かせ、喜ばせる。そして店長が商品の良さを伝えることで感動の連鎖を起こすこと。安価な生地で価格を抑え、お客様が離れていく負のスパイラルに陥らないよう、良いモノ作りをしなければダメだと、いろんなお店が増えている今だからこそ、改めて思っています。
 オーバーストアの時代、自分たちの個性をいかに持つかが大事。お客様に選ばれる店、ひいては人になるために、妥協のない商品を作り続けたいと思います」


■ロンハーマン
「心地良くリラックスした空間で想像力をかき立てる刺激を」
(ロンハーマン ジェネラルマネージャー 三根弘毅さん)
「すべてのお客様に心地良く買い物を楽しんでもらいたい。そしてお客様の想像力をかき立てる心地良い刺激を与えたい。誕生以来、一貫してこのコンセプトとともに歩んできました。4月25日、多種多様な人や文化が融合しさまざまなカルチャーを育んできた街・六本木の東京ミッドタウンに『ロンハーマン六本木店』を、26日には活気あふれる人々が集い、文化や芸術を生み出してきた大都市に生まれるグランフロント大阪に『ロンハーマン大阪店』。そして、6月21日開業するマークイズみなとみらいに、カリフォルニアのアクティビティ×ファッション×アートを表現したコーストカルチャーマーケット『RHC ロンハーマン』をオープンします。それぞれの店で、匂い、音楽、空気、そこにいる人、気の流れ‐‐目に見えない精神的、情緒的価値を感じて頂きたいです。
 ロンハーマンはまだ規模が小さく、ほんの一部のお客さまからのご支持を頂いて運営しています。少しでも多くの方に共感頂きたいと強く願っております」
(c)senken h / text:加藤陽美