【1月15日 MODE PRESS】大田明弥の平成ガーリー論、第5回目となる今回は、年齢を軸にファッションを探っていきます。

日本には「年相応」という言葉があるように、「年齢」に対した理想的な姿があるのではないかと考えています。しかしその年齢の「基準」は誰がつくっているのでしょうか?

■若返るカリスマ

 10年前、私が高校生だった頃、ファッション誌の表紙を飾っていたのは、いわゆる「カリスマ」、浜崎あゆみ(Ayumi Hamasaki)か倖田來未(Kumi Koda)といった20代前半の歌手だった。

 しかし現在、私は彼女たちの年齢をゆうに通り越して、思うことがある。前回のコラムでもお話しした通り、経済を揺るがす程の圧倒的なカリスマはいないにしても、10年前のカリスマは未だに健在し、それどころか梨花(Rinka)や平子理沙(Risa Hirako)、安室奈美恵(Namie Amuro)のような30代後半から40歳くらいの女性が20代前半の読者をターゲットにする雑誌の表紙を飾っている。

 カリスマとマスの年齢が遠ざかれば遠ざかる程、金銭感覚やライフスタイルが異なるのは明らかだが、なぜ今も尚、支持され続けているのか。

 もちろん、彼女たちに魅力があるのは周知の事実だが、マーケティングの分野では、F1が20~34歳、F2が35~49歳、F3が50歳以上とはっきり区切られているのに対して、F1層の雑誌にF2層が表紙を飾るのは違和感がある。

■平均化されていくファッション

 その理由のひとつに、ファッションの購買傾向にヒントがあるのではないか。実際に購入するブランドや選ぶ素材など、全体的な投資価格は異なるにしても、「流行りの色」や「アイテム」に『年齢』という概念がないのが現状である。

 一時、「シャネラー」という言葉が流行った全身ブランド志向から、1点豪華主義に変化していき、他のアジアの国と比べて、貧富の差が少ないと言われている日本では、20代前半の一般女子でもバイト代やボーナスを使って数十万円するコレクションブランドのIt Bagを購入できる。1点豪華主義の「HIGH & LOW」のミックススタイルの定着により、オシャレに気を使う日本女性の年齢の境目をさらに見えにくくさせたように感じる。

■50年間で約15歳も年を取っていることに気づいていない!?

 さらに根本的なところを探ると、食生活や医学の発達により、日本が長寿国であることも関係していると考えられる。

 ネットの検索でヒットした世界開発指標(参照リンク1)によると、1960年には67.67歳だった平均寿命は、2010年には82.93歳まで延びているそうだ。私が生まれた1987年から約4~5歳も平均寿命が延び、50年前と比べると15歳以上も延びているのに対し、私たちが「年相応」とする平均的な姿はまだ延びきっていないのではないかと考える。

■これからの年相応とは?

 多くの女性は、20代に差し掛かったあたりから始まる肌質の変化に、若さは永遠ではないことを自覚し始める。しかし従来の年齢や世代区別に捉われない、自由なファッションやライフスタイルを提案するカリスマたちをお手本に、年齢を重ねる楽しさを学んでいきたい。【大田明弥】

-プロフィール-

モデル兼デザイナー兼ブロガー。1987年生まれ。杉野服飾大学卒業と 同時期に「リメイクができるモデル」として注目され、ブログへのアクセス数が急増。1日最高84万アクセスを記録したのち、リメイクブロガーとして「東洋 経済」やNHK「東京カワイイTV」日本テレビ「NEWS ZERO」などへ出演。現在は、企業や多数のアパレルブランドとコラボシリーズを発表するなど、デザイナーとして活動中。(c)MODE PRESS

【関連情報】
参照リンク:世界開発指標

<TOKYO CLOSET特集ページ>【その1】 【その2】
<MODE PRESS特別講義>大田明弥の平成ガーリー論『第1回』 『第2回』 『第3回』 『第4回』
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