【4月24日 senken h】ひとつの結果や効率にとらわれていては、決してたどり着けない領域がある。それが今最も注目されるバッグデザイナーの1人、佐藤直人さんの世界。「目立ちたい」と20年間ストイックに続けているのが、全く新しいデザインの考案と、それを作り出せる技術力の確立、そして自身の作品を再構築しながらクリエーティブを突き詰めることだ。

 連続する美しさ、立体感をテーマに、前衛的でエレガントなバッグを作る「ナオトサトウ(NaotoSatoh)」の代名詞はプリーツバッグ。「バッグ=持ち運べるオブジェ」をハンドプリーツで表現した94年の第1作は、斬新すぎて一般には受け入れられない。試行錯誤を繰り返し09年「ジャパンレザーアワード」にスカート型バッグを出品するも圏外。この悔しさが転換点になり1歩踏み込めたと語る作品は、翌年グランプリに輝く。「スカートのテクニック・裾消しをバッグに落とし込み、マチの機能と装飾としてのプリーツをマッチングできた」。湿気に弱い革に細かなプリーツをかけられる温度、柔らかさを維持しながら強度も保てる革や厚み、加工を見つけ出したバッグ。生命力を感じさせるプリーツが流れるような美しいフォルムを生み、見飽きることがない。

 また、スポーツ系の素材をエレガントにまとめた96年発表のウエットスーツ素材「ネオプレンシリーズ」も進化を続け、昨年レザーとのボンディング加工に成功。パーツの張り合わせや縫製などにウエットスーツの技法を採用し、裁断はすべて手断ち。土台の特性やステッチの方法まで知り尽くすことで、これまでにない立体感、カーブ、ポケットの仕様を編み出している。

 何度失敗しても諦めない。現場に足を運び話し合いながら、目指す高みに少しずつ近づいて行くのが楽しいという。「ビームス(BEAMS)」「ジュンコ コシノ(Junko Koshino)」など別注品の展開も相次いでいる。「目標はバッグデザイナーとしてコレクションの舞台に立つこと」。クリエーティブの旅は続く。(c)senken h / text:加藤陽美

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