【2月27日 AFP】(一部更新)26日に行われた第84回アカデミー賞(Academy Awards)授賞式でカナダのベテラン俳優クリストファー・プラマー(Christopher Plummer、82)は、60年間に及ぶ多数の出演作でついに初にして、同賞史上最高齢での助演男優賞を受賞した。

 妻に先立たれ、病に冒されながら75歳にしてゲイであることを息子にカミングアウトする父親を演じた『人生はビギナーズ(Beginners)』で今回、アカデミー助演男優賞を受賞したプラマーは、ハリウッドきっての個性派俳優として知られてきた。

 授賞式でプラマーは手にしたオスカー像に向かって「君は僕よりもふたつ年上なだけなのに、これまでの人生の間、いったいどこにいたんだい?」と話しかけ、自分は生まれた時から受賞スピーチの練習をしていたのに・・・とジョークを述べた。観客はスタンディング・オベーションを送った。

■『サウンド・オブ・ミュージック』から約半世紀、多作に出演

 若かりし頃のプラマーは、20世紀北米を代表するシェークスピア(Shakespear)の演じ手になると期待された舞台俳優だった。しかし映画界へキャリアを移した当初、フィルムにそのカリスマ性は十分映し出されなかった。最初に代表作として名が挙がるのは、30代半ばで出演した『サウンド・オブ・ミュージック(The Sound of Music)』(1965年)。主人公マリアに子どもたちの家庭教師を依頼するトラップ大佐(Captain Von Trapp)を演じた。

 けれども、プラマーの演技は年齢を重ねるほど深みと個性を増していった。巨大タバコ会社の内部告発を描いた『インサイダー(The Inside)』(1999年)で演じた米CBSテレビのベテランキャスター役、『ビューティフル・マインド(A Beautiful Mind)』(2001年)の精神科医ローゼン役、スパイク・リー(Spike Lee)監督の強盗ムービー『インサイド・マン(Inside Man)』(2006年)の銀行会長役、米中央情報局(CIA)元工作員の告発本が原作の『シリアナ(Syriana)』(2005年)での弁護士役と近年ますます充実した出演ぶりだ。

 しかし、ようやくアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたのが、2009年の『終着駅 トルストイ最後の旅』(The Last Station)で演じたロシア文学の巨匠レオ・トルストイ(Leo Tolstoy)役だった。同年以降も11作以上に出演。同世代の俳優たちの多くが引退を考える年にして、活躍の場を狭める気配はまったくない。

 マイク・ミルズ(Mike Mills)監督自身の実話を基に、息子役ユアン・マクレガー(Ewan McGregor)と共演した『人生はビギナーズ』ではすでに前月、映画俳優組合(Screen Actors GuildSAG)賞とゴールデン・グローブ賞(Golden Globe Awards)の助演男優賞も獲得した。

 SAGの授賞式では「世界で2番目に古い職業に就く1人であることを、わたしがどれだけ楽しんできたか、言葉にはしきれない。俳優というのは社交好きで、変わった人種だろう?彼らのことが心から好きだし、彼らから評価されれば、それは聖杯で照らされるようなことだ」と受賞への感謝を語った。

 最近のインタビューではこう述べている。「ずっと仕事をしていたい。年を重ねるほど、働き続けることが以前よりも3倍、魅力的に映る。自分が老いているということを思い出さずにすむからね」

 プラマーとともに助演男優賞にノミネートされていたのは、『マリリン 7日間の恋(My Week with Marilyn)』のケネス・ブラナー(Kenneth Branagh)、『マネーボール(Moneyball)』のジョナ・ヒル(Jonah Hill)、『Warrior』のニック・ノルティ(Nick Nolte)、『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(Extremely Loud & Incredibly Close)』のマックス・フォン・シドー(Max von Sydow)だった。(c)AFP

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