【3月17日 senken h】時代の風向きが変わったと実感したシーズンだった。世界的な経済危機や市場の構造変化を契機に、インナーウエアも原点に立ち戻った前シーズンの「モード・シティ(11年春夏コレクション)」はまだ現実感が勝っていたが、今回(11~12年秋冬)はインナーウエアならではの夢や遊びが自由に羽ばたいていた。

 意表を付くような組み合わせが多く、前と後ろ、表と裏でまったく異なる表情を持つもの、透ける素材と透けない素材や白と黒の効果的なコントラスト、さらにボディー全体が絵のように配置された大胆なデザインも見られた。一方で、下着フリークのための近視眼的なこだわりは増し、数種類のレース・プリント・ラメなどのサプライズミックスがよりち密さを増している。

 ビンテージのトレンドも続いているが、レトロなコルセットスタイルではなく、もっと近い過去。色やレース使いに限らず、ビンテージ感はシルエットに色濃く反映され、いくつかのブランドが50年代風のツンとバストが前に突き出るブラジャーを旬アイテムに打ち出していた。

 インナーとアウターをつなぐクロスウエアという意味で、新鮮さを感じさせるのがペチコート(スカート)。全身がレースストッキングで包まれるようなキャットスーツ(ボディータイツ)も復活している。ここ数シーズン注目を集めているシェイプウエア(体型補整ファンデーション)は、ファッション化、ソフト化が進行。新しい傾向としては、セルライト対応などのソリューション機能が注目される。

 色は全体的に黒やダークカラーが中心だが、フレッシュなピンクやニュートラルカラー、さらにインパクトのあるネオンカラーがスパイスを添えている。

■日本から「クーデュバール」デビュー

 独立系ブランドを集めたエリア「ザ・スパイシー」では、新世代のランジェリーデザイナーが確実に育っていることを感じさせた今回。その中に日本から初出展した「クーデュバール(Coup de Barre)」(フランス語で“あ~、疲れた”という意味の口語)は、日本の素材を武器に、おしゃれで気持ちいいホームウエアを発表した。デザイナーの中林良恵さんは、肌着の企業デザイナーとして20年のキャリアを持つ。「もともとタオル用に開発された『エアカオル』というボリューム感のあるコットンを使っています。快適な生活を望む女性たちに向けて、日本の優しさを伝えたい」と話していた。(c)senken h / text:フリー・ジャーナリスト武田尚子

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クーデュバール 公式サイト