【1月31日 marie claire style】「なにをするにも、すべては手によって生み出されるのです。セラミックにしても、デッサンにしても、テキスタイルにしても」

 端整な顔立ちからして、いかにもクールな知性派といった雰囲気のビアンカ・アルギモンは、少し早口で語り出した。

「ヒエロニムス・ボスの『快楽の園』のような、ひとつの世界観を表現したかったのです」。そういいながら彼女は、『エデンの西』という明るく澄んだ色調のデッサンとシルクのテキスタイル作品をみせてくれた。そこには色々な姿をした人間や動物たちが、平和に暮らしている様が描かれている。

 テクノロジーが日常生活に浸透すればするほど、人々は失われていく伝統的な手仕事を懐かしむ傾向にあるようだが、世界的な老舗高級ブランド「エルメス」では、もともと創業当初は馬具を作っていた工房だったせいか、これまでずっと手仕事に強いこだわりをみせてきた。銀座メゾンエルメスフォーラムで開催されているメゾン・エルメスのアーティスト・レジデンシー展も、そうした流れの一環だと思う。

「今回の制作は、作品のイメージを考えるのに2ヵ月かかり、実際の制作はほぼ3ヵ月で完成しました。リヨン市の近くのエルメスのマニュファクチュールで仕事をさせてもらい、とても恵まれた環境でした」

「眠らない手」というエルメスのアーティスト・レジデンシー展に参加するために、パリからやってきたビアンカだが、その作品は手仕事というだけでなく、それを超えた高いアート性が感じられるものだった。父親はブリュッセルの政府機関で働き、母親は外交官という家庭に育ったビアンカは、国境の意識もあまりないようで、18歳になると世界のモード界のスター・デザイナー、ガリアーノやマックイーンを輩出したロンドンの名門芸術校、セントラル・セント・マーチンズに入学している。その後パリに住み始め、エコール・デ・ボザールでも学んだという。

 NYでも展覧会を開き、世界の各都市を旅しているビアンカだが、これからはどのような方向に進みたいのだろうか。

「時代性を軸にしたアートを展開したいのです。新聞の報道にもとても関心があるから、時代分析をアートに取り入れていきたい。または普遍的なテーマを、テクノロジーの技術で表現したい」という。

 EECの拠点であるブリュッセルで生まれ、ヨーロッパ人としての自覚を持った現代のボス、今年31歳のビアンカの視界に、これからどのような世界観が映し出されていくのだろうか。

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(c)marie claire style/photo: WATARU YONEDA/text: Kasumiko Murakami