【11月29日 marie claire style】モロッコが大好きな私は、「前世は、モロッコ人だったのでは?」と思っている。『マリ・クレール』誌やコマーシャルの撮影、ヴァカンス等で、20回近く行っているのでは・・・。

 先日久しぶりに、日本から来た友人とマラケシュに行って来た。パリから飛行機に乗り3時間ほどで別世界に行ける。

 4泊5日の滞在だったが、3日間雨に降られた。地元の人は、年に40日しか雨が降らないと言っていたけれど・・・。

 雨の中ガイドを雇い、たくさんの商店が並ぶメジナを散歩した。複雑なメジナは、ガイドに案内してもらわないと迷ってしまう。

ランプ、家具、木彫り製品、銀製品、銅製品、革製品、絨毯、陶器、染物、洋服などの店が並び、人々が手作りしているのを、見ることが出来る。そして、それらは観光客のためだけの物ではなく、彼らの日常に使われているのが嬉しい。 

 モロッコに行くごとに、私は絨毯を買ってくるがle marchand de tapis(絨毯商人)は、双方が値段を譲らず、徐々に細かく歩み寄る駆け引きの代名詞になっている。

 絨毯を買う時の交渉は大変な作業で、時間がたっぷりあり、元気な時にかぎる。店の言い値の半分くらいで買い落とすのには、こちらは4分の1ぐらいから、交渉を始めなければならない。

 アラブ風の低い椅子をすすめられミントティーが出され、何枚もの絨毯を床にひろげ、吟味しながら長々と交渉をする。彼らは人の心を見抜くのが巧みで商売上手、こちらも心してかからなければならない。お互い腹の探りあいをして譲らないと、数時間に及ぶこともある。今回も1枚の絨毯を時間をかけて買い、パリに持ち帰った。

 天気のよい日にロリカという山の麓にある村に、タクシーで行った。真っ青な空を背景に、アトラス山脈が雪に覆われ、真っ白に輝いている。道路の脇の空き地には、綺麗に並んだ木が、赤っぽい砂漠の土に生えている。運転手さんに聞くと、全部人工的に植えたものだそうだ。

 途中の郊外の市場では、日本やヨーロッパでは廃物となるような物が売られている。空カンに針金で取っ手を付けたバケツ、使い古した歯ブラシ、すり切れたタイヤ、何でも並んでいる。物が溢れ粗末にしている私たちに、忘れていたものを思い出させてくれる。アラブ人は商売好きで何でも売りつけてくる。買わないと今度は何か売ってくれとねだられる。包装を破った1枚のチュウインガム、容器のふたを開けてしまったアスピリン、使いかけのボールペン、なんでもOKで、物を流通させることに長けている。

 マラケシュのレストランは、私たちを未知の世界に連れて行ってくれる。メヂナの薄暗い迷路のような道の何処からともなく、白いジェラバをまとった案内人がランプで足下を照らしながら迎えに現れる。細い入り組んだ道を案内人に従い歩き、レストランに到着すると、突然大きな中庭の四方を、天井の高い建物が囲んだリアドが現れる。薔薇の花びらが敷きつめられ、ロンソンと呼ばれる香が焚き込められ、ミュージシャンが奏でるアラブ音楽が流れている。蝋燭だけの光の薄暗い廊下を導かれていると、本当にアラビアンナイトの千夜一夜の世界にまぎれ込んだような気になる。

 お料理は独特なスパイスを使った沢山の色とりどりの温野菜、鳩肉入りのパスチヤ、クスクス、タジンヌ、子羊を丸ごと焼いたメシュイ、アラブ菓子、1メートル上から小さなガラスのコップに注ぎ込むミントティー。太陽をいっぱい浴びて育った野菜が、とても美味しい。市場で見る野菜は、昔のように不ぞろいで土がついている。食事の終わりに、オレンジの花の香りのする水で手を洗うのも風情がある。

 モロッコで入手した香辛料を使い、私もアラブ料理を作れるようになり、わが家のお客様メニューに入れている。食器も毎回行くごとに買いそろえ、かなり充実している。今回も、香辛料を買って来た。 

 これを書いていたら、又モロッコに行きたくなってきた。

■プロフィール
山崎真子(Yamazaki Mako)仏版『マリ・クレール』元ファッション・エディター、副編集長。日本の美術大学を卒業後、一般企業に就職。1968年に渡仏。テキスタイル会社に勤務後、フリーのスタイリストとして活躍する。85年「マリ・クレール アルバム」社に入社。サラ・ムーンやピーター・リンドバーグなど一流のカメラマンたちと仕事を重ね、『マリ・クレール』の黄金時代を代表する作品を創り上げた。2014年に同社を退職。現在は執筆活動に従事。

■関連情報
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(c)marie claire style/text: Mako Yamazaki