【11月8日 marie claire style】「この香水が似合う女性になりなさい」と、フランス人の父からファーストフレグランスを渡されたのは、14歳の時だった。当時、母の外出を見計らっては、ドレッサーに並べてある口紅には目もくれず、"レールデュタン"や"ディオリシモ"を隠れて纏っていた。フェミニニティを完成させるファイナルタッチとして、毎朝光の粒をくぐる彼女に、きっと憧れていたのだろう。そんな私にとって父がくれた「シャネル N°5 オードゥ パルファム」は思いもよらないサプライズだった。しかし、思春期を迎えたばかりの少女にとってこの琥珀色のフレグランスを使いこなすのは予想以上に難しかった。のちに、銀幕のスターが紡ぎ出したこの名香の華々しいエピソードを知ることになるのだが、そこには遠く及ばないほど小さな自分がいた。それでも、1日のうちに一番長く過ごす勉強机の上にそれを飾り、眺める日々が続いた。

 あれから20年の時を経た今季、誰も彼もを受け入れるわけではない至高の名香が、情熱的でエモーショナルな赤に染まった。女性を美しく演出する筆舌に尽くしがたい色彩と、八角形のキャップを冠したアイコニックなボトルが大胆にも融合したのだ。揺るぎない強さをもたらすフローラルアルデヒドを基調にローズやジャスミンなどの花々をモダンに調合した香りは、コントラスト豊かで感情へダイナミックに働きかける。フレグランス史上において何度でも伝えるべき価値のある宝物といえるだろう。

 残念ながら父からもらったフレグランスは、度重なる引越しを経て姿を消してしまった。彼がこの香水を選んだ背景は、今となっては知ることはできないのだが、マドモアゼルのDNAを確かに受け継ぎながらも刷新されていくN°5は、あらゆる感情を誘い出し、愛と深い結びつきをもたらす数少ないツールであると、年齢を重ねた今こそ思う。久々にこの赤のボトルに凝縮された繊細な調べをひもときながら、幼かった頃の自分を思い出してみる。昔とは異なり、時間が経つほどにパウダリーなトーンが体温で熟され、優雅な美しさとして姿を現すようになった。"果たして私は、N°5がふさわしい女性になっているだろうか"。そんな指針がいつのまにか自分のなかに構築されていたことにふと気がついた。

 これからも女性としての自分に、そしていつか大切な誰かにN°5を贈ろうと思う。それだけのメッセージとストーリーがこのフレグランスにはあると信じているからだ。

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シャネル カスタマーケア/0120-525-519

■プロフィール
小西俐舞ナタリー(Nathalie Lima Konishi)
フランス人の父を持つビューティアクティビスト。モード系美容誌編集を経て独立後、日本や海外の美容媒体をメインに、コレクション速報や取材現場で得た美容メソッドなどを中心に執筆中。レインボータウンFMのラジオ番組「Nathalie’s Beauty Talk」では第2木曜と第1土曜にフランスの最新情報などを紹介している。

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(c)marie claire style/selection, text, photo: Nathalie Lima Konishi