【11月8日 marie claire style】白いロングコート姿の華奢な女性が、飯田橋駅近くのアンスティチュ・フランセ東京(旧東京日仏学院)のテラスで、ゆったりと煙草をくゆらせている。まるでフランス映画のワンシーンみたいだ。女優で歌手のジャンヌ・バリバールは、11月16日より東京で封切りの『バルバラ セーヌの黒いバラ』のプロモーションのために来日していた。

 その作品で、フランスのアカデミー賞といわれるセザール賞の、2018年度主演女優賞に輝いた今注目の女優、ジャンヌ・バリバールは、実に気さくに私たちスタッフに話しかけてきた。

「日本が大好きなのよ。え? 何が? もう何もかも全部。人もカルチャーも風景も、すっかり全部!」

 印象的な大きな目が、笑っている。

 哲学者エティエンヌ・バリバールの娘で、母親も学者、本人もパリの最高学府、エコール・ノルマル・シュペリウールを卒業後、オックスフォード大学へ、というパリの芸能界きっての高学歴保持者なので、勝手に気難しくクールなインテリ女性を想像していたが、思いがけず、とても話しやすかった。

 パリの歌の女王といわれた歌手バルバラを演じるに当たって、どのような役作りをしたのだろうか。今回の作品の監督で、私生活では彼女の元パートナーだったマチュー・アマルリックは、どんな助言をしたのだろう。

「マチューは、すでにシナリオを完成させていたけど、私には自由にさせてくれた。よくアドリブを入れたけど、バルバラは、きっとアドリブが好きな人だったのではないか、と私が思ったから」

 彼女にとって、バルバラとはどんな存在なのか。

「小さい時は、古い45回転のレコードできいていたのを覚えています。18から25歳まで、友人たちとよくバルバラを歌ったものです。『ナントに雨が降る』や『我が麗しき恋物語』はそらで歌えました。それから落ち込んだ時には、『孤独のスケッチ』はなくてはならない曲だった。私にとってバルバラは、人生を教えてくれた人です」

 自分とは異なる性格だったので、女優としてとてもやりがいある役だったという。元パートナーとの撮影現場はどうだったかを訊くと、「ふたりとも、笑うのが好きだから楽しかった」そうだ。

 主演女優として、セザール賞を受けたばかりのジャンヌだが、最近は監督した作品の撮影も終わり、今は編集に取り掛かっているという。

 50歳を迎え、ますます活動の幅が広がった彼女の次作は、タイの鬼才アピチャートポン・ウィーラセータクン監督のものだというから、これもまた期待できそうだ。

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(c)marie claire style/photo:WATARU YONEDA /text: Kasumiko Murakami