【9月27日 marie claire style】「ハイブリッドな才能!」という賞讃の嵐の中で、今、世界のハイ・アート・シーン、ハイ・ファッション・シーンを席巻しているヴァージル・アブローの名は、時代の流れに敏感な人なら、知らない人はいないだろう。

 今春夏パリのメンズ・コレクションで、彼は初めての「ルイ・ヴィトン」メンズのデフィレを披露した。多くのメディアが「天才」とう言葉を惜しまなかったし、世界の各都市から集まった気難しいモード記者たちの中には、これからは彼が君臨する新しい時代がくるのではないか、と予感している人も多い。

 彼のコレクションのどこに、これほどまでに世界を熱狂させる要素があるのだろう。その経歴からして、他のファッション・クリエーターと異なり、異色の存在といえる。

 1980年イリノイ州のロックフォードで生まれた彼は、最初は建築家を目指して、イリノイ工科大学を出た後、建築事務所で働いていたが、アート、建築、モードがそれぞれのジャンルに分かれていることを疑問に思い始め、その事務所を辞めると、今度は「フェンディ」のインターンになる。

「アートは僕たちの精神を開くためにあり、当たり前と思っていることに疑問を持たせるためにあるものだ」

 そう語っている彼は、従来のシステムに息苦しさを感じたのかアートとモードの領域の壁を取り払った「パイレックス・ヴィジョン」の活動を始めた。その後ストリート・ウェアで脚光を浴びていたカニエ・ウェストと共にクリエーションに携わり、2013年には自分のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー™」を立ち上げる。ストリート・ファッションとコンテンポラリー・アートの融合は、すでにだいぶ前から始まっていたが、彼の場合、その2つの要素の匙加減が絶妙なのだ。その黄金比率というのは、建築家だったからこそ見極められるものなのかもしれない。

「僕はファッションとアートの世界を今日的にしたいだけ。それは現実に起きていることとアートやファッションとの間に、ずれがあるからだ」

 インスタグラムのフォロワーが約300万人という彼は、四六時中ネットをみて、インスタグラムも始終チェックしているという。そんな彼には「ずれ」は許し難いことだろうし、同時進行でなければならないのだろう。

 彼が「天才」といわれるのは、その創造的才能だけではなく、コミュニケーション能力もずば抜けているからで、「コラボ王」としての顔も持っている。「ナイキ」「リモワ」「ドクターマーチン」などとコラボし、さらにブランドだけでなく、パリのガゴシアン・ギャラリーでは村上隆とのコラボ展も開いている。

 ともかく世界を股にかけた彼のコラボ熱は止まらない。これからの時代の新しい流れは、今、確実に彼の掌中にあるようだ。

■関連情報
RENCONTRESの特集ページはこちら
【無料ダウンロード】marie claire style PDFマガジンをチェック!
(c)marie claire style/photo: Fabien Montique/text: Kasumiko Murakami