【7月26日 marie claire style】「20世紀は、人間を中心に建築を建てていた。それが今、建築に求められているのは、人間の生活だけに留まらない。今の時代は、人間のためだけではなく、森のため、動物のため、自然環境のための建築が必要なのです。建築を人間から解放していくことが21世紀の建築の課題です」

 最先端カルチャーの側面を常に発信してきたパリのカルティエ現代美術財団で、今春から日本の建築家・石上純也の「石上純也― FREEING ARCHITECTURE(自由な建築)」展が開幕して、その新しい建築理論と詩情の混在する独特の世界観が、高い評価を受けている。入場者も後を絶たず、3ヵ月も会期が延長になったという。先日、東京の外国人記者クラブでお会いした石上さんは、建築家というよりも、どこかミュージシャンのように自由な雰囲気を身にまとった人だった。

──海外でのお仕事の方が多いのですか。 

「ええ。8、9割が海外の仕事です。現在パリ市の都市計画で僕もコンペに参加しているプロジェクトがあり、ファイナルの4人に選ばれていますが、最終決定は来年の4月ですからね。2020年以降のためのものです。それまで待たなければいけない」

──アメリカの大学で教えておられましたよね。

「コロンビア大学で教えていたのですが、今はやっていません。あの頃は1週間おきに、ニューヨークと東京を往復していました」

──カルティエ現代美術財団では「自由な建築」というテーマでしたが、石上さんの自由な建築とは?

「1950年代からの現代建築は、その当時の世界の生活レベルをよりよくするために、ひとつの未来図を示し、みんなで上に行けるようにした。それでよかったのです。ひとつの方向性で。ところが現在、各自の価値観が異なってきて、色んな方向に動き出している。ひとつの未来図だけではなく、色んな未来図を生み出して、それを提示しなければいけなくなっている。これまでの現代建築とはまた違ってきているのです」

 1974年神奈川県生まれ。2010年、36歳でヴェネツィア・ビエンナーレの金獅子賞を受賞し世界に注目された石上さんに、日本建築の今後のテーマをきいた。

「日本建築はイベントのように建てられるものが多い。そうしたスクラップ&ビルドではなく、いかに長く遺すかというのが新しい時代のメインテーマなのです」

 世界が認めた石上さんのこのコンセプトを信じて、日本でも大規模な都市プロジェクトを彼に託してほしいものだ。

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(c)marie claire style/photo: wataru yoneda/text: Kasumiko Murakami