【4月11日 marie claire style】東京生まれ。1972年、「初恋のメロディー」で歌手デビュー。77年のパルコのCMでブレイク。84年に海外のカバー曲「雨音はショパンの調べ」をリリースし、大ヒットとなった。長身で手足が長く細い身体、ウェーブのかかったワンレングスの長い髪、アンニュイな表情と、陰のある雰囲気が都会的な魅力となり、当時のファッションアイコンに。91年、家庭に入るため芸能活動から引退。2016年に活動再開。世代を超えて輝き続ける日本のファッションミューズ、小林麻美の素顔に迫る。

 圧倒的な美しさに、思わず息を呑んだ人は多いはずだ。2018年マリ・クレール ボーテ大賞の「顔」、小林麻美さん。なかには、この「規格外日本人」を初めて目にする人もいるだろう。何しろ、ごく最近までおよそ25年、四半世紀もの間、芸能界から遠ざかっていたのだから。

「まさか、再びカメラの前に立つことになるなんて、まったく、もうまったく、夢にも思いませんでした。仕事を引退してからは、子育てと家事一辺倒。ファッションも、母であったり、妻であったりと、求められる『役割』を優先させていましたから。ただ、もともと洋服が好きだったので、その間もずっと、これが着たい、あれが着てみたいと雑誌をめくったり、実際に着る機会がなくても、購入したりしていました。何がトレンドなのか、デザイナーは何を表現しているのか。その興味だけは捨てたくなかった。時代を体感していたかったのかもしれません」

 高い美意識は何にも勝る美容法であり、ダイエット法なのだと思い知らされるほど、美貌も美脚もあのころのまま。いや、むしろ、充実したときを重ねたからこそ生まれる奥行きとニュアンスがあり、存在ごと引力を増している。エイジレス、ジェンダーレス、ボーダーレス・・・すべての境界が溶け込んだ現代に求められる本物とは? そんな時代に我が国日本が世界に誇れるアイデンティティとは? その答えの体現者、それが小林さんが「顔」に選ばれた理由。

「日本には、成熟することを恐れる側面がありますよね。若さ至上主義というか。もちろん、いつまでも若々しくありたいという気持ちはあるけれど、振り返ると、私は若いころからずっと、成熟した『大人』を追い求めていたのかもしれない、とも思うんです。大人をとっくに過ぎた(笑)、今の自分だからこそ、年齢も含めてありのままに表現できることがあるんじゃないかって」

 写真を見れば、一目瞭然だ。美しい影、だからこそ際立つ美しい光。年齢や経験を重ねることでしか生まれない芸術的なコントラスト。

「今までの人生、いろいろな経験をしてきました。いいことも嫌なことも。そんななか、ある人に『濾過装置を持っているね』と褒められたんです。そうかもしれない。そうだと嬉しい。そうだ、これからどんなことが起こっても濾過装置を失わず、澱を溜めないで、いいことだけを残していきたい・・・。私、『昇華』って言葉が好きなの。昇って華になるって、素敵でしょう? これからはそれを目指しながら生きていこう、と。少し格好よすぎるかな(笑)

 じつは小林さん、芸能界で活躍していた1970年代から90年にかけて購入した「イヴ・サンローラン」の洋服180点余りを公益財団法人「日本服飾文化振興財団」に寄贈。「好きなファッションを通じて何かの役に立ちたい」との思いからで、現在では同財団の評議員も務めている。

「サンローランは10代のころから大好きで、こつこつと買い集めていました。仕事を辞めてから、ほとんど着ることはなくなりましたが、洋服に対するリスペクトはもちろん変わらないし、この洋服たちをばらばらにしたくないとも思っていたので、ずっと大切に保管していたんです。そんなとき、財団が立ち上がると聞き、寄贈を決断。ファッションに興味を持つ若い世代や、新しいものを創ろうとしているデザイナーなど、さまざまな人に見てもらえるなら、こんなに素敵な『お嫁入り先』はないな、と。洋服も幸せだと思うし、何より私が幸せ」

 小林さんが圧倒的な美しさを通して伝えたいこと。それは、とてもシンプルだ。「洋服やインテリアなど、もしかしたら、『あってもなくてもいい』ものかもしれない。でも、そこにしかない価値があると思うんですよね。纏ってみて触れてみて、体感して記憶していく価値が。無駄もあるし、失敗もある、決して合理的じゃない。だからこそ、人生観が変わるような出会いがあるんじゃないかって」

 変わらない美意識。だからこそ永遠に昇華していく美意識。ひとりひとりが今、立ち返りたい、美の原点。

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(c)marie claire style/text: Chitose Matsumotophoto: Makoto Nakagawa〈3rd〉/hair: Dai Michishita make-up: COCO〈sekikawa offic〉/styling: Fusae Hamada/costume: LOEWE(LOEWE JAPAN CUSTOMER SERVICE)BACKDROP=BACKGROUNDS FACTORY