【3月8日 marie claire style】日本映画が好きなフランスのシネフィルに、あなたの好きな日本の監督は?と問うたら、「キヨシ・クロサワ」と答える人は少なくないだろう。作品を発表するごとに、その評価はますます高まっている。

 1990年代にフランスで知られ始めた頃は、黒澤明監督ではなく「若い方のクロサワ」といわれていたが、今では「日本のゴダール」といわれている。その辺りから質問をした。

「名前で得したのか、損したのか、僕にも分かりませんよ」と黒沢監督は苦笑する。

「僕が注目されるようになったのは、1997年の『CURE(キュア)』からだと思います。自分でも分からないのですが、その頃からスタイルを持った監督といわれるようになり、それはいわゆる小津作品にみられるような、伝統的日本のエキゾティシズムとはまるで異なるジャンルだ、とよくいわれました」

 日本のゴダールだといわれているが、それをどう受け止めているのだろうか?

「映画を作っていると、そういうことはよく分からないのです。確かに僕らが若い頃、ゴダールの映画が次々に封切られ、その前のヌーヴェルヴァーグのものも観られたし、実に恵まれた時代でした。とくに『ゴダールの探偵』は素晴らしかった。でも僕が作っているのとは、まるで違いますからね。当時印象に残っているのは、ジャン=ピエール・レオ、女優はアンナ・カリーナ、この前亡くなったアンヌ・ヴィアゼムスキーとかですね。それとイザベル・ユペールも」

 穏やかな表情で語る黒沢監督は、現代日本映画のアヴァンギャルディストとして、フランスではカリスマ的人気なのだが、実に淡々としていて、不思議なくらい過激な印象は受けない。

 最後に次作についてきいてみると、夏からアジアで撮影するが、今はまだ内容は公表できないという。日本のゴダールは、どうやら秘密主義のようだ。

 近作『散歩する侵略者』も、虚構と現実との揺れ具合が素晴らしく、話題作となった。

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(c)marie claire style/text: Kasumiko Murakami