【2月22日 marie claire style】1971年、米国ニューヨーク生まれ。父親は映画監督のフランシス・フォード・コッポラ。98年に『リック・ザ・スター』で映画監督デビュー。99年、『ヴァージン・スーサイズ』で注目される。2003年、『ロスト・イン・トランスレーション』では、アカデミー賞脚本賞やゴールデングローブ賞脚本賞、セザール賞外国映画賞などを受賞し、一躍、有名監督に。10年公開の『SOMEWHERE』は第67回ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞を受賞。そして昨年、第70回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞した注目作品『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』の公開のために来日。世界が注目するファッションアイコン、ソフィア・コッポラの素顔に迫る。

「ドン・シーゲルの映画を観たときに、私のプロダクション・デザイナーが新しいバージョンを作ってみてはと提案してくれたの。リメイクに関しては全く興味がなかったのだけど、シーゲルの映画を観て、テーマにとても興味をひかれたの」発端を語るのはソフィア・コッポラ。新作『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』は、これまでオリジナルの脚本を映画化してきた彼女にしては珍しく、70年代に製作されたクリント・イーストウッド主演のドン・シーゲル監督映画『白い肌の異常な夜』の原作小説を彼女なりに焼き直した。

「一兵士が女性だけの世界、女学校に足を踏み入れるという点に特に興味をそそられたの。それを兵士ではなく女性の視点から描いたら面白いのではないかしら、と思った。南北戦争の時代に女性であることがどんなことだったのか、周囲から隔絶された世界で生活するのはどんなことだったのか。戦時下に女性がどんな状況に置かれていたのかを描いた映画はあまりないから。原作を読み直し、それぞれの女性キャラクターを考察していったの」

150年ほど前、南北戦争の時代が舞台。負傷兵が、男子禁制の女子寄宿学園の教師と生徒に救われ看護されるところから物語は始まる。「周囲に男性がいない環境で育った女性についていろいろ考えた。もしそんな女性が男性をゲストとして迎えたらどうなるか。男性にしてみれば夢のような出来事が、とんでもない方向へと向かうの。そのあたりの驚くべき展開が面白いと思った」

『白い肌の異常な夜』(1971)では兵士という男性の目から語られる。それに対し、ソフィアの新作は館に住む女性の視点から同じストーリーを語るのだ。フリルのついたロングドレスに身を包み、外界の混乱を逃れ、優雅かつ、つつましやかに平穏な生活を送る女性教師と少女たち。一見天使のようにも映る彼女たちの秩序の歯車が、一兵士の出現で、狂っていく。そこがまさに見どころ。

「ソフトでパステルカラーの、何度も洗って色あせたようなドレスの質感を出したかった。全体の色使いを柔らかく繊細に、女性的にしたかったの。撮影には35ミリのフィルムを使った。この映画にある閉鎖感を出すのに適していたと思うし、色彩の暖かさもぴったりだと思った。ロマンティックな映像づくりという点で」

 ルイジアナやニューオーリンズのプランテーション時代の大地主の館で撮影した映像は、見る者を150年前のアメリカへとタイムスリップさせる。

「あの時代の南部は、私にとってエキゾティックな時代なの。生活のマナーや、女性に強いられた作法などが今日よりずっと強制的だったと思う。それでいて、現代の女性にも理解できる境遇だわ。そんな時代 の女性を演じてもらうために、キャストには裁縫、ダンスなど、当時の女性がしていたレッスンを受けてもらったの」

 彼女らと対比をなす存在であり、彼女らの平穏をかき乱す兵士を演じるのはコリン・ファレルだ。

「コリンはとてもカリスマ的で、筋骨たくましく、繊細で女性的な世界と対照的だと思ったから抜擢したの。魅力的な男性が彼女たちの世界に足を踏み入れる、という風にしたかったから。コリンは知的で複雑な心理をうまく演じることができる。この兵士にはタイプの異なる女性みんなを魅了できる男性であってほしかった」

 ハリウッド映画界の名門コッポラ家に生まれ育ったソフィア。ファッション・ブランドを立ち上げたり、音楽ビデオを手掛けたり、演技も経験した。しかし、一番輝くのは監督業だろう。

「メンターはやはり父ね。父は脚本家としてスタートした。幼い頃から物語を書き表現力をつけることを父に奨励されたの。人によってそれぞれの表現方法があるけれど、私の場合は自分で物語を作るというのが性に合っていると思う。ジェーン・カンピオン監督との出会いも大きいわ。彼女は私にとって常にロールモデルだったし、カンヌ映画祭で審査員を務め、一緒に過ごす時間をもらえたのは貴重だったわ」

 幸運にも若い頃から世界的な映画祭で檜舞台に立つことが多かったソフィア。まだまだ数少ない女性監督の一人として、女性の視点を映画界に反映させることに責任を感じるだろうか。

「基本的に私は自分が観たいと思うような映画を作る。女性として、女性監督それぞれが自分なりの視点を表現し、可能な限り幅広い女性の視点を世界に提供することが文化的に意味のあることではないかと思うの」

■映画情報
『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』
2月23日(金)より東京・TOHOシネマズ六本木 ヒルズほかにて全国公開

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(c)marie claire style/text: Yuko Takano / photo: Inez and Vinoodh / Trunk Archive / amanaimages